• ホラー
  • 詩・童話・その他

詩がメインの自主企画に参加してみて

しばらくは短めの作品を書こうと思い、300字というなんとか書けそうな文字数縛りの自主企画を見つけたので、参加させてもらいました。
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330660356623252

300字以内であれば詩でも小説でもどっちでもいいというルールでしたが、小説を書くには300字はさすがに短く、やはり詩の方が多かった印象。

いくつか読ませてもらいましたが、部分的にこれはいいなと思うフレーズはいくつもあるんだけど、話全体としてはいいのか悪いのかよく分からない。あまり詩を読んだことがないので、経験値が足りないんでしょう。もっといろいろ読まねば。

といっても、好きな詩のひとつやふたつはあります。
これは第一次戦後派作家の梅崎春生の『三十二歳』という詩。題名からして三十二歳のときに書かれたものでしょう、たぶん。結果が出なくて悶々とする魂の叫びみたいなやつです。

カクヨムにはプロ志望の方もたくさんいらっしゃるでしょうし、趣味で書いているエンジョイ勢も、自分の書いたものを読んでほしい、ハートやお星さまがほしいとは思っているわけで、グサッとくる人もいるんでは。

(注)梅崎春生は早くに亡くなっているので、著作権は既に切れております。

     ***

三十二歳

三十二歳になったというのに
まだ こんなことをしている

二畳の部屋に 寝起きして
小説を書くなどと力んでいるが
ろくな文章も書けないくせに
年若い新進作家の悪口ばかり云っている

女房も持てない 甲斐性なしだから
外食券食堂でぼそぼそと飯を嚙み
夕暮 帰ってくると 不潔な涙を瞼にためて
窓から 空を見上げてぼんやりしている

時には やり切れなくなって
アルコールなどをうまそうに啜《すす》り
揚句のはてに酩酊《めいてい》し
裸になって おどったりする

ゴヤやドーミエだって
こんな惨めな男は 描かなかった

雑巾《ぞうきん》にでもなって 生れてくれば よかったのに
人間に生れて来たばかりに
三十二歳となったと言うのに
おれはまだ こんなことをしている

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する