何年か前に一度だけ文学フリマに行ったことがあります。
場所は東京。
当時の僕は小説を書き始めてまだ一年ぐらいで、殴り書いた小説を某SNSに垂れ流しているだけの物書きでした。
その文学フリマで、なんとなく惹かれて買った本があるのですが、今でもその本は僕にとってかけがえのない一冊として本棚に置かれています。
たった一文字のタイトル。
冊子程度の厚みの短編。
作者の想いが丁寧に、ときに暴力的に書かれたその小説は、25冊しか売れなかったと後日、作者の方がブログに書かれていました。
「悔しかった」という言葉と共に。
僕はその「悔しかった」という言葉が怖くなってしまって、本の感想を、その本に出会えたことへの感謝を伝えることができずにいました。
本の巻末にはメールアドレスも、ツイッターのアカウントも載っていました。
ツイッターにリンクが貼ってあったブログにも何度も訪れました。
でも、伝えることができずにいました。
半年後、すべてのSNSの更新が止まりました。
ツイッターにはカクヨムのリンクも貼ってありましたが、「悔しかった」の一言が僕の胸に強烈に残っていて、それらの作品を読むことができずにいました。
手元にあるその一冊だけを、何度も何度も読み返していました。
今日、それを思い出して、その作者の方の作品を読みに行きました。
おそらくもう活動はされていないと思います。
それでも作品を残しておいてくれたことに、今とても感謝しています。
僕もいつか、誰かの心に残り続けるような小説が書けたらいいなぁ、と改めて思いました。
文学フリマ、また行きたいです。