平等な共産主義国家であるソ連には、フルシチョフカと呼ばれる国営の集合住宅が多く建てられていました。
この建物は、当時のソ連で発生していた住宅不足を解決し、全ての人民に平等に住居を与えることを目的としていましたが、徹底した低コスト化により、多くの問題も抱えていました。
建物自体が脆弱で崩れやすい、エレベーターなどが設置されていない、致命的なレベルで狭いなど、その問題は多岐に渡りますが、最も大きな問題は壁が薄いことです。
一説によると、隣人の日常会話が聞こえてくるほどだったそうで、プライバシーなど欠片も考慮されていない壁の薄さは、多くの隣人トラブルを発生させました。
ですが、ソ連にはどんな隣人トラブルでも解決してくれる、素晴らしい団体が組織されています。
その名もKGB(ソ連国家保安委員会)です。
隣人トラブルに悩まされたソ連人たちは、KGBによってトラブルを解決していました。
方法は単純。
KGBに隣人を密告すれば、彼らがやかましい隣人を夜のうちに片付けてくれます。隣人は行方不明扱いになり、二度と戻ってくることはありません。
密告の内容は何でも構いません。もちろん、虚偽でも大丈夫です。
ちなみに、もっと穏便な方法で隣人トラブルを解決したいのなら、関係者に多額の賄賂を送って、自分が移住するか相手を移住させることができます。
ソ連の崩壊によってKGBが解体されたことで、フルシチョフカの数少ないメリットは完全に失われました。
政府としては、ちゃんとした家を建てるまでの仮住まいというつもりだったようですが、結局は多くのソ連人が生涯にわたってこの集合住宅に住み続ける羽目になりました。
大量に建築されてソ連の名物となったフルシチョフカですが、その大半はソ連の崩壊後に次々と寿命を迎え、今では、その数も少なくなっているそうです。(ただ、北朝鮮には類似する施設が存在しています)