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一人称と三人称

 一人称視点の小説と、三人称視点の小説。この世界には、どちらの視点で書かれた小説の方が多いのだろうか。

 僕は今、一人称視点の小説はほとんど書かない。長編は、ほぼ全て三人称。逆に、短篇はだいたい一人称。理由は不明。
 僕が初めて投稿した小説は、一応長編の体で、一人称視点。それまで、三人称視点で小説を書いたことはほぼほぼなかった。というか、三人称視点で書かれた小説を読んだ記憶もほとんどない。

 ある日、物語がキリのいいところで終わったので、次のエピソードは三人称視点で書こうと思い立った。
 しかし。
 書けない。書き方がわからない。
 それまで一人称でしか小説を書いていなかったから、勝手がわからない。主人公に語りを任せられないって、こんなに面倒くさいのか、とその時は思った。
 でも、案外慣れてみると、三人称視点で書く方が自由度が高かったりする。別に、三人称でも主人公の内面を直に書いたって問題ないし。

 自分(語り手)の眼でしか見ることのできなかった作品内の世界が、三人称視点になったことで、自由自在にカメラを動かせるようになった。いろんな視点から、いろんな角度から、世界を描くことができる。
 
 物事を俯瞰で見るので、文章(特に文末)が単調になるきらいもある。だからこそ、描く内容=読者に見せるものに、一層気を遣う必要がある。それが、僕にとっては、人の動きだ。
 まばたきの数、口の尖りぐあい、歩幅、声の形。心のうごきは、そのままその人にも表れるはずだから。

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