失恋し、その感情に翻弄される少女――桂花。
感情を持たない死神が、彼女の感情を喰らい奪うことで、感情を知り、学んでいく。
感情を知っていく死神と、感情を失っていく少女。
そんな本人たちの変化と、その関係性の変化が、愛しき物語になる――。
「心知らぬ死神の愛した世界」
(https://kakuyomu.jp/works/16818093078249244546)
ただ、愛して、愛されたいだけ――。
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わたしがずっと書いてみたかった、感情をテーマにした作品です。
感情といえば、感情のやり取りを必須とする恋愛にスポットライトが当たりますよね。やっぱり。
あれ不思議ですよね。理性を通じて頭ではわかっていても、感情は言うことを聞いてくれないし、好き勝手暴れてくれちゃうし。
そういう葛藤って、人間の特権なのかもしれないですけど、限度ってものを知ってほしい。
……とまぁ、そんなふうに悪戦苦闘するのが、桂花という少女です。
感情って、水みたいですよね。
途切れることがなく、流動的で、そして見方によって変化します。
同じ場面に遭遇しても、人によって違う感想を抱く。不思議ですよね。
その感想はその人が育ってきた環境や、経験して得た知識・感情によって構成されます。
人間って、二語文として文を形成できるようになる3歳頃からの記憶をもつと言われています。
ですが、3歳以前で得たものが無になるわけでもない。
人格形成に影響し、その後の状況を捉え方を左右する。
そして幼少期は、母胎での記憶も持っている子も少なくないです。
つまりは、母胎からその子の経験という名の知識は育まれているわけで。
じゃあ、それすらも“何もなかった”ら、どうなるんでしょうか。
この作品を書くとき、“何もない”を考えさせられることが多いのですが、“何もない”って難しすぎませんか?
その事象に対して、“何も”感じないって、難しいですよね。
それがこの作品を書いていて、一番大変なところです。
『死神よ、君は何を考えているんだ……』と頭を抱えることが多い……。
そこから、少女を通じて死神が得た感情がどう影響し、どう変化していくのか。
そもそも変化することは可能なのか。可能だったとしたら、どんなことが影響して変化をもたらすのか。
……頭バクハツしそう。
そんなこんなで、感情に翻弄される少女と感情というものを知らない死神という、正反対な彼らが紡ぐ物語を、どうぞお楽しみくださいませ。