こんばんは、月影 夏樹です。前回に引き続き、「現代ドラマ」の中から2作品の感想を紹介したいと思います。
作品名……「海原の彼方」
作者名……上羽 理瀬さま
1 作品概要
逢坂 樹という少年の手紙を元に、高校3年生の少女 上條 玲と少年 日向 航たちの切ない青春を描いたお話です。また玲の親友だった 河野 志帆という少女の存在も、ストーリーにおける重要な役割を持っています。
2 良かった点
(1) 表向きは元気に繕う玲と航ですが、心の中では友人の死を悲しむ……そんな切ない気持ちが、丁寧かつ上手にまとまっていました。
(2) 悲しい青春や思い出の一点張りではなく、玲の微妙な恋愛感情もしっかりと表現しています。作品のクオリティーをさらに高めていると、私は思いました。
(3) 物語の中に自然をイメージさせる言葉が多く登場し、作品に感情移入することが出来ました。
3 気になった点
(1) 日向 航のキャラクター設定について、多少無理があるように思えました。一部ネタばれになってしまいますが、『学校の成績はトップ10ではなく平均以上に抑え、大会に出場するも予選で落ちてしまう』くらいの方が、よりリアリティーがあるかと思います。
4 総合評価
私なりに、上羽さまがなぜタイトルに「海」ではなく「海原」としたのか、考えてみました。一般的に「海」というと、とても身近な存在で子供から大人まで楽しめる、一種のレジャースポット・観光スポットとして認識されています。
一方で「海原」と明記することで、「海」に比べてより広大という意味があります。冒険家コロンブスもかつて、「大航海時代に大海原を旅した」という歴史ある記録が残されています。
そして作品の中で、玲と航、そして樹と志帆にとって「海」は特別な場所です。また作中に“海の見える丘の上にお墓が建てられている”と書かれていたことから、『彼らが天国へ行った後も、広大な海を楽しんでいる光景』が自然と浮かびました。
そう私は解釈して、上羽さまがタイトルを「海の彼方」ではなく「(広大な)海原の彼方」と名付けたのではないかと思いました。
前置きが長くなってしまいましたが、ここで改めて総合評価に入ります。
全体的にバランスよく仕上がっている作品で、読み終えた後に心が温まりました。また最初は普通の学園ドラマかと思っていましたが、良い意味で異なる路線へと変わった点についても、素晴らしいと思います。
また僭越(せんえつ)ながら、「海原の彼方」へレビュー投稿・ならびにフォローさせていただきました。ただレビュー投稿は今回が初めてなので、至らぬ文章かと思います。何とぞご了承ください。
以上となります。
なお4の解釈は私が作品を読んだ上での自論なので、上羽さまの考えは違うという指摘などございましたら、いつでもご連絡ください。