カクヨム開設から二年以上、まったく使用してこなかった近況ノートですが、せっかくなので一年の振り返りなどここでしてみようと思い立ちました。というわけで今年書いた作品の総括です。
〈長篇〉
金魚辻迷宮
もともと『白唇と雪灯籠』に連なる中篇として構想したものが、諸々あって長篇化。七月から九月にかけて、ちょうど二か月で書きました。自分としては現状、最速の記録だと思います。何だか恐ろしく消耗した気がしますが、ともかく長篇ひとつ仕上がったのが大きかったです。
〈中篇〉
How Can I Make It Through The Night?
学生時代、貴志祐介や井上夢人、ディーン・クーンツといった、ジャンルを越境する作家によく触れました。創作においてもその影響は強く、当時はファンタジー要素を導入したサスペンスなどを書いていました。過去の自分と現代の自分の作風がミックスしたような一作になったと思います。
〈短篇〉
Bluecracy
「どこかいつもとは違うところに行きたい」という一心で書きました。身勝手な失敗作になるだろうと半ば覚悟していましたが、その予想を覆し、大勢の方々に温かい言葉を賜ることができました。「まずはこれを」とはなかなか言いにくい変な小説なのですが、それでも自分にとって、ちょっと特別な位置を占める一篇です。
波打際から来た少女
カクヨムの公式自主企画「音楽」のために書きました。作中に登場する楽器「海竜琴」は、ウリ・ジョン・ロートのスカイギターがモデルになっています。他にもブライアン・メイのコインによる奏法、多弦ギターとヘヴィメタルへの言及など、小さな遊びがいくつか仕込んであります。
プロジェクト・ワイルドハント
pixivノベル大賞2021秋、現代ファンタジー部門に投稿した作品。もともとはSFで行くつもりだったのですが、二万字ほど書いた段階で頓挫してしまい、困り果てた挙句にこれを書きました。自分の思い出や過去の創作物に助けられて、どうにか完成させることができたという気がしています。仮タイトルは「夜行領通信」でした。
琉璃色の習作
これはほぼ実体験。探偵とその相棒が登場する「日常の謎」系統の作品で、もしかしたらシリーズ化するかもしれません。連城三紀彦、泡坂妻夫、岡嶋二人、そして山田風太郎といった作家たちを遥か遠くに見上げながら、手探りで書いたミステリです。
〈掌篇〉
ゴーストのいる踊り場
手癖全開と言いますか、「自分の掌篇ってこうだよな」という感じの一作。全体を貫くトーンがわりと気に入っています。
甘やかな毒と牙の
すべて会話だけで書く、という試みに挑戦しています。僕のホラー寄りの作品の多くがそうなのですが、最後にするっと世界が移行する、という作りです。
夕方にかけて、激しい死者が
自主企画「死体が降ってきたところから始まる短編」に寄せたもの。怪現象を淡々とレポートするコメディのつもりで書きはじめたのですが、終わってみるとまったく違う作品に様変わりしていました。
〈雑文〉
殺意日記
幼少期、さくらももこのエッセイを読んで「文章でこんなにも人を笑わせることができるんだ」と衝撃を受けたのを、今でも覚えています。長じてからも、森見登美彦、町田康、奥泉光などの独特の語り口で笑いを誘うタイプの作家が好きで堪らず、文体を真似たりしていました。そうした影響から生まれたエッセイ、ということになると思います。
〈中断〉
結晶獣の郷
八万字あたりまで粘ったのですが、にっちもさっちも行かなくなって泣く泣く中断した、というのが正直なところです。世界観やキャラクターは気に入っているので、どうにか仕切り直したいですね。
世界樹の階(仮題・未公開)
異世界ファンタジー長篇。「世界樹の幹には風の旅路を辿るための階がある」という伝承を信じた少女が空を目指す物語になるはずでした。これもいつかどうにかしたいのですが、大々的な組み換えが必要になりそうで難儀しています。
クルル・クローネの結晶体(仮題・未公開)
pixivノベル大賞に投稿するはずだったSF。「拡張を続ける階層状の都市を舞台に、リフトでの上下移動を繰り返しながら自動人形の謎を追う」という筋の物語だったのですが、制限字数内で纏め切ることが困難になり、頓挫。『結晶獣の郷』にもクルルというキャラクターが登場しますが、特に関係はありません。
読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます。来年もどうにか書き続けていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。