https://kakuyomu.jp/works/16817330669643139400/episodes/16817330669643212655■
『不見の楽仙』アップしました。『百鳴邸の主』と同じ長安の話で、胡散臭いあいつが引き続き出てきます。相変わらず特に人死にもなく物騒なこともおきない、ちょっとした不可思議のお話になりました。
これもずいぶん前に考えた話です。ようやく形にできて嬉しい。
作中出てきた琵琶について少し。
日本の琵琶と違い、現代の中国で使われている琵琶はバチを使ってないんですね。指につけた爪で弾く方法をとっています。とはいえ日本の琵琶も大陸から渡来したもののはず、大陸ではいつ頃から指弾きになったんだとあれこれ調べてみると、どうやら唐代が分岐点らしい。
西市のくだりでも触れたように国の文化や文物が入ってきたこと、それにあれこれあって宮廷で奏でられていた音楽と(そういった〝官〟の礼楽を司るのが劉條の在籍している太常寺という部署です)、遊里の伎女たちなどがになっていた民間の音楽がクロスし始める時期でもあったことが影響しているようです。
唐といっても長いよ、どこで分かれたんだとちょっと探ってみたんですが、年号みたいにきっぱり分かれたはずもなし。まして民間の風俗というのは年表のようにはっきりした記録が残るものでもありません(それでも唐代は資料が多い方だと思いますが)。
古い画図等でバチを手に琵琶を弾いているものがあること、また〝あの琵琶〟のできた時代からして、唐代でも初期ならバチで弾くのもありかなとこうなりました。
今回の主人公は音楽マニアみたいなものなので、爪弾きの技法を知ったらそっちはそっちで会得するでしょうが。
ちなみに劉條、ある意味仕官してない魏遼より〝攻めた〟異動をしています。作中でもちろっと書きましたが、出世コースぶん投げもいいところなので。大人しいように見えて、そういうロックな奴です。
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今年最初に買った本は東洋文庫の『教坊記・北里志』でした。
この後でまた平康坊の遊郭が舞台になる回があるので、参考資料になるかなと。
次はちょっと遊里から離れる『憂惧する骨吏』です。