4/10締め切りの電撃小説大賞向けに書いていた作品が無事脱稿しました。
3/6から本文の執筆を始め、追い込まれているというのもあって、一日5,000文字前後というハイペースで書き続けて、80,000文字を超え、ラスボスも倒してあとはエピローグ……というところで不意にパソコンがブラックアウト。
……は?
再起動しても見たこともないページに行ってしまってなにがなにやらわかりません。全部英語で書かれているし。おいふざけるなせめて日本語で書けとか思いながらスマフォで翻訳アプリを手に入れいろいろ翻訳して見てみました。
で、結局エラーコードがなんなのかがわかったくらいで、直し方はわからずじまい。ましてそのエラーコードが書かれているページに「サポートセンターにこのエラーコードをお伝えください」と書かれているくらいなので、もうほとんど詰みの状態でした。
サポートセンターの方に説明し、エラーコードをお伝えしたところ
「そのエラーコードはHDDが完全に壊れているということなので、修理ではなく取り換えとなります。取り替えなので、データはすべて消えます」
と回答が。
そんな回答、聞きたくなかったぜ……。
だがしかし、迷っている暇はない。どうせぶっ壊れてるんだから。自力で直せないうえに、公式が「取り替えるしかない」と言っているのだから取り替えるしかない。ならさっさと取り替えて早めに挽回した方がいい。
しかしサポートセンターの方、焦る私にこう言いました。
「家電量販店でお求めいただいたのなら、もしかしたら家電量販店の無料保証期間中かもしれません。一度そちらでお確かめいただいた方がよろしいかと思います」
結果、5年保証内の4年目にぶっ壊れたので、無料でHDDを取り替えてもらえることに。
金額的な部分では大いに助かりました。
しかし問題は書きかけの小説のデータ。外付けHDにある程度バックアップは取っているものの、ここ最近データを入れた記憶がない。
一体何文字生きているのかわからない。1文字もバックアップ取ってなかったらぶっちゃけ詰みでしょう。
「データは最低2万5千円で引っ張れるかもしれません」
という悪魔の囁き。
しかし私は突っぱねました。
私は小説を書いて金を得ているわけではない。一銭も稼いでないのに、小説のために金なんか使っていいわけない。
それに、「書きゃあいんだろ、書きゃあ!」という謎の強気詩一が自分の精神世界に君臨して吠えておりました。
たとえ1文字もバックアップが残っていなくても、絶対に書き切るんだ。
しかし、パソコンを渡して手続きを終えた私にとんでもない言葉が降りかかります。
「お受け渡しまでは2週間ほど掛かります」
「主よ! 主よ……! どうして私を見限ったのだ……!(エリエリレマサバクタニ!!)」
という内心を一切見せることもなく、「あ、はいわかりました」と受け答えた私は、どれだけ神に裏切られても前を向ける精神をいつの間にか手に入れていたんだなと確信しました。
そこから普通に二週間後を計算すると……帰ってくるのは4/4。
「ジーザス……」
私は仏教徒とは思えないほどに神を憎みました。
「あのぉ……そもそもお門違いなんですけどぉ……」と神は困っていることでしょう。でもそんなの知りません。こっちとしては都合のいいときにお礼を言ったり憎んだりする対象でしかありません。マジアーメンってことっすわ。
しかしそこで嫁からの言葉に電流が走りました。
「わたしのワイヤレスキーボード貸してあげるから、パソコン返ってくるまでスマフォで書いたら?」
その手があったか!
「君は天才か!」
「逆になんで思いつかないのかな」
「これは伝説になるぞ……。受賞したらあとがきに妻の一言のおかげで締め切りに間に合ってとか書いて……それでめっちゃ人気作家に……ふふふ」
「……それは、良かったね」
私は嫁から苦笑いとワイヤレスキーボードを受け取り、人生初のスマフォ執筆にとりかかりました。
どこまでデータが残っているのかわからなかったため、うしろから書くことに。ほとんど書き切っているものを書くのは容易に思われました。
が……。
「書けぬ」
文字が浮かんだ瞬間に言葉になってくれないストレスは、相当なものでした。同じキーボードとは思えないほどに使いづらい。キーの配置も少し違うし叩いた感触も違う。またちょっとしたラグなどで、私の思考とタッチにキーボードとスマフォがついてきてくれないのです。
これではニュータイプがショベルカーに乗っているようなものです。詩一、これじゃあいけませーん!
どれだけ良い言葉が降ってきてもそれをすぐに文章化できず、誤タッチを連続すれば書けるものも書けない。
ですが、人間とはすごいものですね。最初は3時間執筆し続けても3,000文字書けなかったのが、三日後には倍速で書けるようになっていました。
そうやって毎日時速字数を増やしていき、最終的には70,000文字書いていました。
今回のようにうしろから作っていくことでより明確に認識できたことがありました。それは構成を最初の時点で明確にしておくと、どこからどこまでがひとつながりかというのがわかりやすいということです。
・フィナーレからファイナルイメージまで(およそ20,000~25,000字)
・迫りくる悪い奴らからセカンドターニングポイントまで(およそ20,000~25,000字)
・おたのしみからミッドポイントまで(およそ20,000~30,000字)
という感じで覚えておけば、文章の過不足が認識しやすいですし、イベントがどういう順番で起こっていくかも、主人公の心の動きとかも覚えやすい。
構成をしっかり立てる利点を、実感しました。
ただ同時に、うしろから書くってめっちゃしんどいなって思いました。やっぱり前から順番に書いていくのがいいです。矛盾も少ないですし。
そして4/4にパソコンが帰ってきました。早速外付けHDを取り付けてデータを確認。そこに生きていた文章は50,000文字でした。グッジョブ。自分。
すぐにでも取り掛かりたかったのですが、最初の1日はセットアップと確認作業でつぶれ、次の日はパソコンの更新が終わらずにつぶれ、実際に作業に取り掛かれたのは4/6からでした。
生きていた50,000文字に書いた70,000文字を合わせ、重複している部分を見比べ、生き残っていた部分と新しく書いた部分どっちがふさわしい文章なのかを吟味していく。さらに矛盾がないかの確認と誤字脱字のチェックも。
改稿、推敲、校正の三つを同時進行していくような感じで、4/9の真夜中に書き終わりました。
だから出したのは4/10。本当にギリギリの戦いでした。
今日、私は紅葉の種を蒔きました。3月上旬から冷蔵庫で保管していた種を、満を持して。
説明書には1か月から1年の間に目が出ると書かれていました。
できるならば3か月後。芽吹いてほしいです。
その芽に、一次選考を通過したと知らせてやりたい。そして願わくばその枝葉に、受賞したと知らせてやりたい。
そのように思いました。
種を蒔けば絶対に芽が出るわけではありません。
しかし、蒔かなければ一生芽が出ません。
当たり前です。
だから私は、これからも種を蒔くでしょう。たとえすぐに芽は出なくとも、いつか芽吹くと信じて。