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【あとがき】長編『こころ、消えてなくなれ』完結に寄せて

 はじめての方ははじめまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。どちらでもない方はこんにちは。音海佐弥です。
 読者諸賢におかれましてはご健勝のこととお喜び申し上げます。

 音海佐弥の長編第七子『こころ、消えてなくなれ』が先日無事に完結しました。
 最後までお付き合いいただいた方々には本当に深謝いたします。ありがとうございました。

 振り返ればもう長編7本目か……ずいぶん遠くまで来たような、哀愁に似た感慨がある……といえば嘘になります。「くそおもろいの書くゾ〜^^」と思いながら文書作成ソフトの新規ファイルを立ち上げるときの高揚感は、1本目も7本目も変わりませんね。こんなことを50回も100回も繰り返していくのかもしれません。7本のうちほとんどは現在非公開になっていますが、いつかの機会にご披露できたらまた付き合ってあげてください。

 とは言っても原稿それぞれで見えてくる課題はあるもので、『ふたつ星』ではキャラクター造形、『きらきら』では心情描写、『カレイドガール』では物語の展開や構成に注力したのに対し、本作は「とにかく早く書く」というのが目標でした。いわゆる「締め切り」に対するスケジュール感覚を身体にぶち込むことです。
 当初の目標はオーバーしてしまいましたが、企画開始から5ヶ月、執筆には3ヶ月を費やしましたので、音海史上では最速であがった長編原稿でした。隔日の投稿予約という締め切りに追われながらゆるゆるのプロットを練り直してすぐ書いてその場ですぐ上げて……という刺激的な毎日を送れたのはいい思い出です。おかげで毎晩締め切りちゃん&破綻プロットちゃんが枕元に立つようになりました。助けて……。

 さて、突然ですが登場人物たちの名前の由来をご紹介します。

◯日飼刻都/ひがいときと
 本編でまっっったく触れられません(忘れてた)でしたが主人公の苗字は日飼(ひがい)くんです。ヒガイはコイ科の淡水魚で、綺麗な黄色いヒレが特徴です。漢字だと「鰉」と書きます。かっこいい!

◯紗原悠伽/さはらはるか
 サワラはサバ科に属する海水魚の一種で、焼き物、吸い物など広く食用に適します。産卵のため春に沿岸地域でよく見られることから「春を告げる魚」と呼ばれました。そのため「鰆」の字が当てられています。西京焼きおいしい!

◯若名奈津/わかななつ
 ワカナのことを地域によっては「ワカシ」(こっちの方が一般的?)と呼ぶそうで、ワカシは成長してやがてブリになります。東中野に「ぶり中野」というブリ専門の居酒屋があって、とてもおいしいです。ワカシには「魚夏」という字を当てます(変換できませんが)。

◯梶賀璃生/かじかあきお
 カジカはカサゴの仲間の魚。見た目は悪いですが汁物として食されることも多く、郷土料理として親しまれている地域もあります。漢字は「鰍」。

◯中澄芙雪/なかずみふゆき
 ナカズミもまた出世魚で、大きくなるとコノシロと呼びます。コハダ、の方が耳馴染みがあるかもしれません。寿司屋に行くとよく頼んじゃいますよね。コノシロの漢字は? そうです、「鮗」ですね。
 当初芙雪は「小沼城(このしろ)」という苗字にしようとしていましたが、どうしても読み方に魚感が出てしまうので響きのいい「なかずみ」にしました。

 刻都と奈津が再会した中学の同窓会、幹事の名前も鮎川くんです。
 こうしてみると、どうですか? ……そうでしょう、魚が食べたくなりますでしょう。
 これをご覧のみなさんがもっと魚を好きになってもらえますように。

 以上、『こころ、消えてなくなれ』の謝辞でした……って、あれ、魚の話???????????

 そんな魚類図鑑的な作品である本作ですが、誠に勝手ながら9月中旬から末を目処に一旦公開停止とさせていただきます。
 それまでの間、『ふたつ星』後半の公開を再開させていただきますので、よろしければお楽しみください。
 また、もしお時間が許すようでしたら次の長編でみなさまのお目にかかれればと思っております。何卒よろしくお願いいたします。

 というわけで、音海佐弥『こころ、消えてなくなれ』でした。ありがとうございました。
 次作『Schöne Träumerei(仮)』と『タイトル未定』でお逢いしましょう。

二〇一八年九月吉日

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