連載一周年がたちました!!
いつも読んでくださってる読者の皆様には感謝です。
というわけで記念に本当に短いものですがSSをおいておこうとおもいます。
せっかく七月七日なので七夕ネタで!
本編とは違い息抜きに書いたので文章稚拙だったりしますがご容赦を。
※時系列としては高校二年の七夕付近
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ある七月上旬の夕方。
ふたりは近所のスーパーへと、食材の買い出しをしに来ていた。
今夜は肉じゃがが食べたい、というリクエストに応じてくれて、毎度のことながらくるみが腕を振るってくれるというわけだ。
「ほら、お財布」
「はい」
レジで碧がくるみに財布を預け、会計をする。料理に来てもらう立場で費用はこっちもちなので、後から立て替えたりするより財布を渡してしまった方が早い……という理屈でこうやって預けている。もはや恒例行事だ。
その間に自分はてきぱきと購入品をマイバッグに詰め、持ち上げたところで会計を終えたくるみがこっちへ来る。
「ありがとう。いつも重い荷物持ってくれて」
「むしろ僕がリクエストしたのに持たせたりしたら駄目で……」
そう言いながらふと目に留まったのは、入り口横の自動ドアのあたりにある、小さな笹だった。
別れた枝には、カラフルな短冊がいくつも結びつけてある。
ポップな織姫と彦星のイラストにある吹き出しには「おねがい事を書いてみよう!」とある。
碧は目を光らせた。
——だってこれ、すごく日本ってかんじの光景! すごい!
「碧くん、あれ書きたいの?」
くるみがこてりと首を傾げて尋ね、碧もこくりと頷くと、近くに短冊の山があったのでそこからくるみがペンと一緒に一枚持ってきてくれた。
その表情はなんだか小さい弟を見守るような温かいもので、ついはしゃいだ自分が気恥ずかしくなり、きゅぽんとペンの蓋を取りながらごまかし笑いをする。
「僕こういうのに目がないんだよね」
「ふふ。たまに本当に子供みたいよね、あなたって」
「高校生はまだ法律上は子供です。……っていうか今『たまに子供みたい』って言った? そう思ってるなら、いつもの子供扱いはなんなの?」
「あれ? 子供扱いされて反発する碧くんが可愛いから」
小悪魔みたいな発言に反して、慈母のようにくすくす笑うくるみ。
「……べつに可愛くないって」
そんな笑顔を見せられれば、恥ずかしいからやめてよなんてとてもじゃないが言うことは出来なかった。
代わりにやや傷ついた男心を表明するように拗ねた返事をしながら、おねがい事をさらさらと書き上げていく。
「くるみさんは書かないの?」
「え? じゃあ……書こうかな?」
そう言ってくるみも薄桃色の短冊を一枚手に取ると、すごく真剣な表情で向き合い始めた。
いったい何を書こうとしているんだろう、と気になりつつも、碧は一枚だけじゃ足りなかったので追加で三枚ほど手に取ると、くるみがそれに気づいて苦笑する。
「あ。そんなに書こうとして。ほんとにマイペースなひとっていうか」
「枚数制限ないしいいかなって。叶えたいこといっぱいあるし。くるみさんは何か思いついた?」
「うーん……無病息災かしら」
「それ新年に神社でいうやつでは?」
「ぱって思いつくものがなくて。そういう碧くんはなんて書いたの?」
「早く旅行のための貯金ができますように。くるみさんのやりたいことリストが叶いますように。新しい言語学習が順調に進みますように。夏に熱中症になりませんように。あとは……」
きゅ、と服の裾を握られて、口上を中断する。
見るとくるみは真っ赤になって恥ずかしそうに瞳を伏せていた。
「さらっと……」
「ん?」
「私のおねがい事をなんで碧くんが書いてるの。自分のを書けばいいのに」
「え。だってくるみさんのやりたいことリストが叶ったら僕も嬉しいし。あ……神様頼みじゃなくて一緒に叶えなきゃだめだよねって話だよね」
他人事みたくなってしまったか、と勝手に結論づけると、くるみは大きく嘆息。
それから抓んでいた袖を放して顔を上げると、ほわりと微笑んでいた。
「本当に……碧くんっていうひとは」
その笑みが可愛くて、みずみずしくて、美しくて。
どきっとしながらも、返された言葉がなぜ責めるようなものだったか分からず、けど頬だけは熱くて。
はてなマークを浮かべながら、笹におねがい事を結びつける碧だった。