ゴリラーメンです。

欲しい物を見つけると、ひとまずカートに入れる派だ。
ネットショッピングの話である。
これをすることによって、いざカートの中身を見直したところ本当は必要の無い物だと分かり、買い物の欲求が抑えられると聞いた。カートに入れただけで手に入れた気分になれる、妄想節約術。実際のところ自分はこれで、無駄な買い物をしなくなったように思う。

某通販サイトのカートに、以前から残されたままの商品がある。文庫本だ。かなり昔、きっと五年以上前に『あとで買う』のボタンを押したまま放置されている物である。
わたくしは普段、書店で本を手に取る際、書店員様のポップや帯に書かれた紹介文を参考にしている。「是非読んでみたい」と思わせてくれる謳い文句、あのセンスの良さには感動すら覚える。
「これはきっと、今読まなくてはいけない作品だ」
それを運命の出会いとし、その場で購入することは勿論ある。が、とりあえず覚えておこうとスマホで検索をかけ、メモ代わりにカートへ…。
それが積もり積もって、この度カートの整理をすることにした。
五年以上もカートに入ったままなのだ、きっと自分が本当に読みたい本に違いない。よし、買うか。…五年も経ってるんだ、中古で販売されているかもしれない。
某中古書籍販売サイトにアクセスした。書店員様、ごめんなさい。

検索バーに本のタイトルを入力する。
あった、あった。おお、定価より7割も安いではないか。こっちは8割引き。魂削ってお仕事されてる作家様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだが、その日暮らしの貧乏会社員が本に触れるには、これが精一杯なのです。
ポチッ。ポチッ。カートへ放り込んでゆく。

ところで。
わたくしは、決まった作家様の作品に偏ることが多い。
このシリーズおもしろい…。この作家さん好きだ…。この作家さんの表現方法や書き方が好きだ!
ここまでくると、出版社様の枠を越えて、兎にも角にも作家名でコレクションしたくなる。
逆に言えば、新しい作家様に手を出しにくいタイプとも言える。失敗も、何度か経験しているからだ。ぶっちゃけ「この人の書き方読みづらい…話が頭に入って来ない…おもしろくない…」と思うこともごく稀にあるのだ。

ここで話はもとに戻るのだが。
先ほどカートに入れた作品を、あらためて見返してみる。
はじめましての作家様のお名前ばかりが並んでいた。
急に緊張してきた。
これ、全部失敗だったらどうしよう。
五年も寝かせといて今さら何を言っているのか。ここでまたカートに放置したら、前に進めないではないか。
思い切って、購入画面に進む。支払い処理を済ませ、注文受付のメッセージを確認し、大きく息を吐いた。
五年越しの買い物。ほとんどポイント使ったけどな。来週には届くと思われ。
ところでわたくしは中古の本を購入した際必ず除菌ティッシュで……(永遠に続く)

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