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次のお話を一部チラ見せ、と。

章立てできることに今さっき気付きました。ぽんこつ!

こんばんは、お世話になります。佐倉です。
アクイレギア、タイトルがわさわさしていたので、
各話まとめてスッキリさせました。
中身は変更ありませんので、ご安心くださいませ。


さて。
次のお話どうしようかなぁと迷ったのですけれど、
書きたいお話から書けばいいかなぁと開き直りまして。
前回の近況で言ってた「暗いやつ」にしました。


■あらすじ


星が戦火に覆われ、人と文明の中心は地下世界へと移った時代。
荒廃した地上で、狼犬のミーチャと共に生きる三等無認可術師のニレは、ある雨の日、死にたがりの青年・トーマと出会う。

正体不明の墜落機が、自国のものでないことは知っていた。
けれど、彼を「助けて」はいけないのだと、教えてくれる人はいなかったのに。

***

二人と一匹が谷底で生きていく、地味なお話です。

何だかんだと素直で正直だったリンとレグルスとは正反対で
ニレもトーマもいろいろ拗らせていて可愛げがないので
受け入れていただけるか不安過ぎるのですが、
もしよろしければ、面倒臭い二人にお付き合いください。


と、書きあげるのに少し時間がかかりそうなので、
プロローグ飛ばして一話目だけプレ公開。


***


 身の上話をしようにも、「選ばれる」より昔のことを、よくは覚えていないのだ。
 突如始まる記憶は晩夏。ざらつく電子音が読み上げた、一億通の死刑宣告から。

 どうやら己(おれ)の祖国は、このたび世を去ることになったらしい。



 ――死んで土くれになった後、花でも咲かせてやれば良い。それが我らの復讐だ。

 不謹慎な冗談を言い合っては馬鹿の様に笑い転げた。今になって思えば、皆、兎角笑わねば、ポキンと根から折れてしまいそうだったのだろう。
 我らは誰一人として、死を恐れていたのではない。
 一度此の地を飛び立てば、帰る故郷は其処になく、家族も友も海の底。
 死ぬことばかりを口にしては、ただただ笑った。
 何せ、これから身一つに偽の翼を得て、世界に傷痕を遺しに往くのだ。守るべきものも最早持たず、この行為に何の意味も見出せず。
 笑わずして、どうしろと云うのか。

 自虐と追憶に逃げ込む己を、息の詰まるような激痛が捕えた。
 真っ先に異常を訴えたのは、両の耳。水が入ったような違和感と鈍痛が、鼓動に合わせて迫り来る。痛みは次第に熱を孕んで、脳を滅茶苦茶に掻き回した。ぬるい胃酸がせり上がる。唾が苦い。鼻が痒い。暑い。寒い。手は、足は、まだ付いているのか。身体中すっかり木偶になったかのように動かず、凍り付いて、五感は苦痛ばかりを声高に主張する。
 歪む視界に、気付けば若い娘の姿があった。祖国の女とは似ても似つかぬ装いが、絶望を煽る。二言、三言、何事か問うた様だったが、こちらは碌に耳も聞こえず、僅か掴んだ言葉の断片さえ理解できない。
 ここは何処だ。云いかけて、口を噤んだ。

 隣を飛んだ友が皆、各地へ散って墜ちた今。己の言葉など誰に伝わろう?
 言語までもが、己を見捨てて死んでしまった。

 そのことに思い当たった瞬間、ひくり、痛んだ喉が痙攣して。
「ど、して……」
 ひび割れた音が不明瞭な死語を吐き出し、無様な己を嘲笑う。
「っ……は、……ぁは……はははは!! な、んだよこれ、こんな、こんな……何で、どうして……――どうして死なせてくれなかった!!」
 勢いだけは十分な、掠れた声でただ吼える。
 それが八つ当たりであることも、一種の甘えであることも、知っていた。答えなど聞きたくもなかった。それでも尚、腹の底で膨れ上がる「何故」を、ぶちまけずにはいられなかったのだ。何の意味もない、故に行き場のない、剥き出しの激情に任せて。
 どうしたらいい。どうにもならぬ。自問自答する知性ごと、いっそ叩き壊してしまえれば。

 生きている。
 これ以上の地獄を、「僕」は知らない。

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