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「リュー!」
幼い声が飛んできた。我に返ったときにはもう目の前に子どもの顔が迫り、彼は両手を伸ばして胸に飛びこんできた。
「うわっ!」
少年もろとも背中から倒れる。リュヴァルトにしがみついたままウィルはくすくすと笑みをこぼした。
「リュー、ありがとう! ぼくやっぱりレモン水作ってよかったって思ったの。お母さんのためにできることがあってほんとによかった! リューが教えてくれたからだよ。リュー、ありがとう! 大すき!」
少年が全身で発する喜びや好きという気持ちにリュヴァルトは圧倒された。彼の想いにも媚だとか下心の類いは一切ない。純粋なる好意が大きな波となって伝わってくる。
驚きすぎて言葉を継げないでいると、
「いつまでもそうしてたらリューが重いよ?」
アネッサが窘めた。ぺろりと舌を出してウィルはリュヴァルトの上から身体を退ける。それでも小さな手はリュヴァルトの手をしっかり握ったまま離そうとはしなかった。とても、とても温かい手。
「他にもできそうなことがあったら、また教えてくれる?」
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【月のひかり、陽だまりの歌】
https://kakuyomu.jp/works/168180930883515395341章[13]ありがとう!
https://kakuyomu.jp/works/16818093088351539534/episodes/16818093088353595845(2018年10月描画)