皆様こんにちは!
今日はハロウィン、らしいですね……?
というわけで片手間で書いてみました。
本編はまだハロウィンに到達しておりませんので(直前ではありますが)、近況でSSという形にさせていただきましたっ!
というわけで、お楽しみいただければ幸いでございます!
念の為混乱のないようにお伝えしておきます。
本作、諸々の都合により2020年のカレンダーを参照して進めております。現実の今年の曜日周りとは異なりますのでご留意くださいませ。
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「りょーうっ、トリックオアトリート! 今日はハロウィンだよっ!」
「現在進行系でいたずらされてる気がするんらけど……?」
今日は10月31日。俺には全く馴染みはなかったけれどハロウィンである。そして今年のハロウィンは土曜日、栞が文乃さんとの交渉の末勝ち取った週末限定のお泊りの日でもある。
つまり、昨日学校から俺の家へと帰ってきた後、栞はそのまま今に至るまで俺と過ごしているというわけだ。
そして現在は早朝、俺より早く目覚めた栞はまだ寝ていた俺の腹の上に馬乗りになり、これまた俺の頬を両手で弄んでいる。
「だって、涼のことだからハロウィンなんて覚えてなかったでしょ? お菓子の用意もなさそうだから、こうしていたずらしてるんだよっ」
「いや、うん。今の今まで忘れてたから用意なんてしてないけどさ……、そういう栞はどうなの?」
昨日からそんな素振りはなかったので、栞の方も俺と同じだと思うのだけど。
「んふふっ♪ 私はねー、もちろん用意してないよっ!」
「栞だって人のこと言えないんじゃん……」
「私は良いのーっ! だってねぇ?」
栞は馬乗りのまま、上体を俺に預けてくる。ぎゅっと抱き着いてくると、栞の口は俺の耳元に近付く。
あぁ、これはまたなにか企んでるやつだ。
俺の予想通り、栞は声をひそめて言うんだ。
「私は涼にいたずらしてもらいたいんだもんっ♪」
ほら、やっぱり。
昨夜だって散々いたずらしたりされたりしたはずなんだけどなぁ。
というわけで、今の俺は結構ぐったり気味なのだ。
「まったく、栞は……。なら、俺からはトリートで」
「えぇっ?! 実はこっそりお菓子用意してたの?!」
「してないって言ったじゃん。その代わりになるもの、あげるから。ほら栞、目閉じて?」
「うん、わかった」
再び身体を起こした栞は目を閉じて、俺が何かを手渡すと勘違いして両手を皿のようにして胸の前に持ってきた。
そんなことをされても渡すものなどないので、そこは無視。俺も起き上がって、期待にウズウズした栞の顔に自分の顔を近付けていく。
そして、
──ちゅっ
栞の柔らかな唇に口付けをする。いつもより更に愛情を込めて。
「んっ……?! ふぁっ、涼っ?!」
唇が離れると栞は目をまん丸にしていた。
「えっと、これが代わり、なんだけど……。どう、かな……?」
お菓子の代わりだから、優しく、甘めに、を心がけてみたのだけど。
「あぅ……。もうっ、涼ってばっ! 不意打ちずるいよぉっ!」
「いやだった?」
「いやなわけないもんっ! 涼のキス……、お菓子なんかよりとっても甘々だった、よ?」
「じゃあ、これで代わりってことでいいよね?」
「いいけどぉ……。一回じゃ足りないっ。ねぇ、もっとぉ……」
キス一回で栞の甘えん坊スイッチが完全に入ってしまったらしい。声はふにゃふにゃ、瞳はうるうるで可愛いしかない。栞がこうなった責任は俺にあるわけだし、とことんまで付き合ってあげることにしようか。
「はいはい。おいで、栞」
「うんっ♪」
いつもと大差ない朝になってしまったわけだが、俺達のハロウィンはこうして始まった。
いや、これ以上ハロウィンらしいことはなかったんだけどさ……。