先日投稿した短編『プレス』が2020/11/3現在、「5分で読書」ホラー部門で6位、総合24位となっております!!!!!
まあ、公開初週のご祝儀順位なわけですけれども(笑)
でもねえ、めっっっちゃんこ嬉しいのですよ!!
自分にとって初となるコンテスト応募作品、そして初めての恋愛描写0の作品ですので、もう恐る恐る書いていたんです。
結果的にはホラー成分よりも、自分がかねてより関心を持っていた「自殺」というテーマの方が話の中心になってしまったので、コンテストの主題からはかなりずれたものに仕上がってしまったなあ……という自覚はあるのですが、こんなにもたくさんの皆様に読んでいただけましたので、満足はできています。
(読んでいただいた皆様、本当にありがとうございます)
実は今回のこの『プレス』という題名なのですが、もう一つ『自業苦』というタイトルとどちらにしようかと、ずっと悩んでいたのです。
『自業苦』というのは仏教用語であり、端的に表現すると自分の犯した過ちによって苦しみ続けることです。例を挙げるならば、嘘をついてしまった後( いつバレるだろう…… )と怯え続ける毎日を送ったり、浮気をしながらずっと( いつか修羅場になるんだろうな…… )とひやひやしていたり……といったものですね。
この苦しみは「この世の地獄」と称されることもあり、一部には地獄という言葉の語源になったのではないかという説をまことしやかにささやいている人もいるとかいないとか……
そんな、人間ならば誰しもが経験したことがあるであろう『自業苦』。それがもしも、他の誰かを傷つけてしまった後悔に起因するものであれば、その引きずり方もきっと一様ではないのではないでしょうか。
死後の世界というものが本当に実在しているのであれば、特に自殺という選択肢を選んでしまった方は、きっと今頃あの世でそのような苦しみを抱えてしまっているのではないかな……と僕は思うのです。
一度でも誰かのお葬式に参列したことのある方であればお分かりいただけるかと思うのですが、あの哀しみ一色に染まってしまった恐ろしい場所、もしそれを自らが生み出すことになってしまったらと考えると、僕は本当に恐いです。
両親や親類、友人たちが自らの亡骸を一瞥し、目に涙を溜めて会場を後にしていく様。そんなものを目の当たりにしてしまうと、きっと自ら命を絶ってしまった方たちでも「ああ……、もう耐えきれないと思っていたけれど、もう少しだけでも頑張ってみるべきだったのかな……」だなんていう後悔を抱くのではないのかな……と。
そして、もし実際にそうなのであれば、それは本当に悲しいことだと思うのです。
救いを求めて自ら命を絶ったのに、死後も『自業苦』に囚われて安らげない……。
もちろん、死後に『自業苦』にさえ囚われなければ自殺という選択肢を肯定できるのに……といった話ではありませんよ。そんな選択肢を彼らが選んでしまう前に我々の側からそっと助け舟を出せるというのが一番最善の選択肢なのだと思います。
でも、実際にはそれが難しいんですよね。
今のこの時代に自ら死を選んでしまう人というのは、結局は優しすぎるのだと思うのです。優しすぎるが故に、抱えきれないほどの悩みを、苦しみを、誰にも相談できずに独りで背負って、だんだんその重みに、プレッシャーに耐えきれなくなってしまう。我々がそれに気づいたころには、もうその人はここにはいない。
全く迷惑なんかじゃないから、気兼ねなく相談しにきてくれたらいいのにと思うんですけどもね……。
少し話がそれてしまいました。ダメな癖です。
この『プレス』の主人公である男の子も、きっとそんな人だったのだろうなと思います。(ここから下、ネタバレ注意)
彼は口では「経済的な理由でもう医者になれる道がなくなったから死ぬのだ」的なことを言っていたわけですが、おそらくそれだけが原因で自殺という選択肢を選んだわけではないと思うんです。
確かに、彼がこれまでどれだけいじめられてもめげずに生きて来れたのは、医者になるという夢が精神的支柱になってきたからです。でもそれも決して盤石な柱ではなく、本っ当にぎりぎりのバランスで何とか立っていられたというだけで。
「医者になってみんなに頼られる立派な人間になること」=「いじめっ子を見返す唯一の手段」=「自分が生きていけるたった一つの道」だと彼はずっと思ってきたわけです。
しかし、ついにその道を諦めるべきタイミングが来てしまった。もしも彼が両親や他の誰かにその本音を相談していれば、医者以外の新たな道を見つけることも、アルバイトでお金を稼ぎながらもう一年浪人するという道を選ぶことも、もしかしたらできたのかもしれない。
でも、彼はそれをしなかった。
それは、こんなに自分が追い詰められていることで他の誰かに心配をかけたくないという優しさのせいです。
その優しさが彼をより追い詰めてしまった。
背負った苦しみの重さに耐えきれなくなってしまって、そのせいで、こんな場所で焼身自殺なんてことをすると火がどこかに燃え移ってしまうのではないか、なんて考える余裕も失くしてしまった。
その結果が、劇中で描かれたものです。
確かに、彼が悪いのです。彼の罪はどれほどの時間が経てども決して許されることのないものであり、いつまでも『自業苦』を抱えたまま『地獄』で裁かれ続けるのでしょう。
しかし我々は、果たして彼を悪だと糾弾できるのでしょうか……。
ちなみに、劇中で彼をひたすら圧死させ続けていた被害者の女の子も、彼の抱えていた事情は知っています。可哀想な人なのだとは感じているのですが、それでもどうしても許せないという怒りを抱いているのです。
でも彼女は、頭のどこかでは許してあげるべきなのかもしれないと思っているようです。まだ小学5年生という設定なのですが、大人ですね。
しかし彼女も、彼も、きっとこれからも永遠にあの場所で悩み苦しんだまま過ごすことでしょう。
そう思うと、どうもやるせない気持ちになってしまいますね……。
この世界に救いなどないのでしょうか……。
(P.S. しばらくは新たな小説を投稿するつもりはありませんが、受験が終わったら、今度はこれとは真逆の、明るめのお話を書きたいなと思っています⦅泡-ABUKU-を除く⦆)