簡単に分かる話を簡単には分からんように書いたので当たり前なんですが、分からんとのコメントも頂いたので、ちょっとマジメに解説します。
当然のことながらネタバレです。
物語に登場する近藤は三人です。
まず探偵の近藤(近藤A)
刑事の近藤(近藤B)
思考実験室の近藤(近藤C)
近藤Bは『事件は一時間ほど前に起きたはずだ』と言っています。確信がないんですね。しかも最初から近藤Aとの会話が噛み合ってません。
話の流れ的に分かるわけないのでズルいんですが、近藤Bはめちゃくちゃパニくってるんですね。
事件は思考実験室の『状態保存の間』で起きました。これは部屋の状態を四つまで保存する装置です。ただし保存した状態は入れた順番の逆でしか取り出せません。
コップにボールを入れていくイメージですね。状態というのがボール。上から入れていくしかできず、上からしか取り出せません。
ちなみここで『アセンブリ言語のメモリだ』と思っているのは近藤Bだったりします。
それでまず近藤Cは『近藤Cがいる部屋』を記録しました。近藤C1とでもしましょう。以下、数が増えたら数字を増やします。
次に、近藤Cは『近藤C1がいる部屋』を再生して『近藤C1を殺害した部屋』を保存します。
ここでポイントなのは、『近藤C1を殺した部屋』を保存したために『近藤C1のいる部屋』と『近藤C1を殺した近藤C2がいる部屋』が記録されていることです。
実はサラっと流していますが、開放と再生は別の処理なんですね。開放すると確定してメモリが開きますが、再生は何度でもできる(かもしれない)のです。
かもしれないがついているのは明言されていないからです。ただ、後に説明しますが、そうでないと説明がつかなくなってくる。
さて近藤Cは『近藤C1を殺害する近藤C2を殺害する近藤C3がいる部屋』を作り、近藤Bに通報します。
近藤Bは近藤C1~3を止めるため部屋に入ります。そこで『近藤C1~3を止める近藤Bがいる部屋』を作ろうとした結果、近藤C1~3の死体が出現しました。このとき近藤Bは怪我をしたのでしょう。近藤C1~C3の死体がある部屋に血が一滴落ちました。DNA鑑定で犯人はすぐに分かるので、近藤Bが近藤C1~3を殺したことになってしまいます。
焦った近藤Bは現場に触らず近藤Aを呼びました。
近藤Aは人間とは言い難い生き物ですが、それは事件とはまったく関係ありません。
話を聞くうちに近藤Aは気づきます。
もし近藤Bが近藤C1~C3を止めた状態を保存したのなら近藤C1~C3の死体だけ残るのはなぜなのか。
メモリが一杯なので、最後に保存した近藤C1~C3の死体がでたのではないか。
一人裏返ってたりしてますが、これは賑やかしです。すいません。
近藤Aはこの現場写真を見て気づきます。メモリが四つで近藤Bが止めに入ったのになんで死体が三つあるのか?
どれも近藤正行の死体ですが、近藤Bが俺の一滴が残っていたと言いました。
ここでミスリード二個目(だっけ?)。
死体はすべて近藤Cのもので、近藤C1~3です。
状態保存の間はメモリを四つまでしか記憶できずオーバーしたら一番近いのを吐き出して保存するので、『近藤C1を殺害する近藤C2を殺害する近藤C3を止めようとしている近藤B1がいる部屋』のはず。
ということは、近藤Bが来た時点で何かしらの状態が保存されているはず。
ここまでの情報から、再生されている情報に干渉して保存すると新しいものとして記録されるのは明らかなので、すべての事件は『何もない状態保存の間』を再生し、その中で行われていたことになる。
いやそもそも、何もない部屋を記録せずに何もない部屋を存在させることはできないではないか。
近藤Aは簡単な話を難しくしやがってと思いながら答えます。
ようはぜんぶを開放してやれば一番最初の部屋になるよね。
で、ここから私のミス。
これ現状の情報からだけだと、近藤C1~3が全員死んでるのはおかしい。止めに入った近藤Bが殺したことにすればよかった。
それなら論理的に矛盾は起きないけれど、また別の問題が。
やっぱり、当初の計画通り、扉の開け閉めと中と外の関係を使って、扉が空いている状態で記録の保存をはじめれば部屋と世界の位置関係が逆転して世界が部屋の中とイコールになるっていう一休さんもマジギレしそうなトンチキ論理にすればよかったです。
あ、ちなみに探偵の近藤正行が他の近藤正行と同じ名前なのは、単に頭をぐちゃぐちゃにさせるための目眩ましです。推理小説でそれをやるのは……どうなんでしょう。
新本格的には邪道ながらパズルを複雑にするって意味ではオーケーなような、そうでもないような……分かりません。
(あと開放と再生と確定と取り出しの使い分けミスったかも?)
(てかこんな理解しがたいものばっか書いてるからダメなんじゃないのか……?)