こんにちは。
作者のラジオ・Kです。
今回は表題にある通り、資料⑦に登場した自作オリジナル用語の解説をしてみようと思います。どっちかというと一言紹介だと思いますが……あとはネーミングの参考などになればなぁと(需要があるかはともかく)。
それでは早速。
・人物編
【爬蟲超龍(リザーバグ)、ジェルギオス】
まずは種族名。爬虫類と龍族、宇蟲(シャッガイ)を組み合わせて造られた生物兵器です。結構安直なネーミングはそのせい。
彼女の名前、ジェルギオスの元ネタはキリスト教に伝わる聖人「聖ゲオルギオス」より。ゲオルギウス、ジェルジオ、ゲオルギイとも表記されます。
どっかで聞いたことある竜殺しの伝説の人です。
【人造生命体(ホムンクルス)、アルカマ】
種族名はよくあるやつなので割愛。
アルカマの元ネタは作中でも触れられた通り、アラビア半島南部にあったサバア王国(イエメン)にて信仰された月神「アルマカフ(al-maqah)」です。
アラビアというとイスラム教のイメージがありますが、多神教中心の時代もあったようです。天体信仰、星辰崇拝というらしい。
古代イエメンでは月神アルマカフ・太陽神シャムス(al-shams)・両者の子である金星神アスタル(al-astar)の三神が主に信仰されていた様。
ちなみにアルマカフは男神。そう、「男」神です。ところでアルカマは作中では……
(前略)体全体を拭いてから下着、ワイシャツ、ネクタイ、タイツ、台形スカート、トレンチコートを(後略)
とあり、つまり……男の娘はよい文明だと思います。そう、男の娘はよい文明なのです( ^∀^)
【Melanostigma(メラノスティグマ)】
もし拙作を詳細に読んでいれば「お前かよ⁉」となる人物です。ヒントは第10章。
そんな彼女の元ネタはカリブ海に生息するケヤリムシの一種、ビスピラ・メラノスティグマ(Bispira melanostigma)です。
髪の毛……触手に目がついてます。また、つむじの辺りに2つめのおくちがあります(捕食用)。
結構カワ(・∀・)イイ!!と思いますが(ケヤリムシが)……皆さんはどう思います?
【Glaucus(グラウクス)】
彼も第10章で登場しました。
元ネタはアオミノウミウシ(Glaucus atlanticus)です。
かっこいいとカワ(・∀・)イイ!!を両立した見た目だと思います。素晴らしいです。
クラゲに取り付いて移動&捕食し、刺胞細胞を取り込んで自衛武器として活用する生態を持っていることで有名。
【混竜種(キメラドラコ)セメニー】
F文明人(後述)にとって種族間ハーフは禁忌だったらしく、それ故に人ではなく種=獣扱いを受けてきました。それは種族名にもしっかり反映されています。
セメニーとはチェコ語でsemeny。Semenoの複数増格形で、これは植物学では「種」を。生理学では「精液」を意味します。
もし「女性につける名前としてはあんまりではないか」という感想を持った画面の向こうのアナタ。そんなアナタはきっと真っ当な感性の持ち主です、ご安心を。
真の差別は名前から始まっているのです。
【呪子(ずゅど)
≪黄金≫のLarvandadラルヴァンダード
≪乳香≫のHormisdas ホルミスダス
≪没薬≫のGushnasaph グシュナサフ】
これらは纏めて紹介します。
初見ではナニコレ? と思った方も多いのではないでしょうか。カンがいい人は≪≫内の文字でピンときたかも。
それでは、同じ順番でこう表記すればどうでしょう?
メルキオール Melchior
バルタザール Balthasar
カスパール Casper
……はい、エヴァンゲリオンに登場するネルフ本部のメインコンピュータ「MAGI」が元ネタ! ではなくて。
新約聖書に登場し、イエスの誕生時に来訪し彼を拝んだとされる人達「東方の三博士」が元ネタ。ラルヴァンダード~の読み方はシリアのキリスト教会で当てられた呼び名です。
呪子、の読み方については恐らく発音できないのではないでしょうか。多分「ずど」とでしか発音できないと思います。この手法はクトゥルフ(Cthulhu)のそれをまねしてみました。
・用語編(実在編)
【諸王の王(シャーハン・シャー)】
なんかかっこいいですよね。このシャーハン・シャー、Xšāyaθiya Xšāyaθiyānām(古代ペルシア語)とは諸王の王、王の中の王、王者の王などと訳されます。
要は皇帝ってこと。
現実としてはペルシア帝国の君主の称号として使用されました。
【クテシフォン】
バグダード(イラクの首都)の南東、チグリス川東岸にある古代都市の名前。クテシフォン・セレウキアなどとも。紀元前1世紀ごろにパルティア王国により建設、東西交易の中継基地とした栄えたが、637年にムスリムによって陥落。その後は急速に衰えゴーストタウンとなってしまう。
『千夜一夜物語』に登場する都市「イスバニル」の元ネタらしいです(139話、第667-79夜)。
【har(ハル)】
紀元前4300年頃のアッカド~バビロン第1王朝にかけて使用された最古の銀貨です。リング状や螺旋状で、財布がない時代でも持ち運びに便利だったとか。アナトリア半島のトロス山脈から採掘されたものを使用し、単位としては「シェケル(shekel、アッカド語)」がある。これは通貨価値と重さを兼ねた単位。
・用語編(実在+オリジナル)
【勉強部屋(マドラサ)】
子供部屋……ではなく勉強部屋です。
マドラサ(مدرسة)というのはイスラーム世界における学院のことです。アラビア語で「学ぶ場所」を意味する。一般的にはワクフ(慈善事業のこと)にて運営されています。
【タルムード国立探究施設】
このタルムード(תלמוד)というのはモーセが伝えた6部構成、63編から成る「口伝律法」を収めた文書群のことです。現代のユダヤ教の主要教派の多くが聖典として認めており、彼らの生活・信仰の基となっています。
【学導師(グル)】
共謀者、の方ではなく。
サンスクリット語ではगुरु、と表記され「師」や「教師」を意味する単語です。
ヒンドゥー教ではバクティ・ヨーガ等の指導者の意で使用されます。日本ではオウム真理教教祖の麻原彰晃がマハー・グル・アサハラと名乗っていました。
作中では家庭教師、の意味で使用しています。
【初級学習施設(ガドワラ)】
元ネタはグルドワラ(ਗੁਰਦੁਆਰਾ)。シーク教の寺院で、託児所や図書館、病院、教室などが付属していることもあるそうです。
【中級学習施設(ワート)】
元ネタはワット(วัด)。タイ・ラオスにて寺院を意味する言葉である。通常「ワット・○○」という形で、固有名詞の上に冠して用い、それが寺院であることを示す。また「ワット」単体でも寺院を意味する。
【高等学習施設(シナゴグ)】
元ネタはシナゴーグ(בית כנסת)。ユダヤ教の会堂のことで、ギリシャ語のシュナゴゲー(集会所)に由来する。元々は聖書の朗読と解説を行う場で、現在では礼拝、結婚、教育、文化行事までも行うコミュニティの中心的存在となっている。
【職業訓練校(ファベル)】
元ネタは「工作人」を意味するホモ・ファーベルより。フランスの哲学者アンリ=ルイ・ベルクソンが定義した言葉で、ヒトの知性の本質は創造性であると指摘した。
【探求訓練校(ハビータ)】
元ネタは「ハビータ勅令」。これは1155年に神聖ローマ皇帝フリードリヒ・バルバロッサが発したものでボローニャ大学で学ぶ者の権利と安全を保障した。
【藩立下士官訓練施設(マルズハーンの館)】
元ネタはMarzbān、南西アジア史において国境地帯や辺境地域の総督、太守、辺境伯を意味する称号のこと。古代から中世にかけて使用された。
【藩立士官訓練施設(バシリコイ・パイデスの館)】
βασιλικοὶ παῖδες。マケドニア王国に存在した教育機関のことで、王立子弟学校という意味。ここに招聘された哲学者のアリストテレスは「将軍のための学校」と評した。
【スカンセン】
Skansen。元ネタはスウェーデン初の動物園及び野外博物館のこと。また、この単語自体屋外博物館や歴史的建造物を集めた施設を指す用語として主に中央・東ヨーロッパにて使用されている。
作中にほんのちょい役で登場しました。メラちゃんの彼氏君ことグラウクスの新しい職場。作中では「大学附属図書館」の意味合いで使用しています。
・用語編(完全オリジナル)
【F文明人】
文字通りF文明に属する人々のこと。
で、肝心の「F」とは……forsaken、fallen、founder、final、Forgotten……様々な「F」で表すことができるが。彼らを最もよく表す身近な「F」はfantasyであろう。
外世人であるエルフ種、ドワーフ種。交じり果ての似獣種、咎残されし竜種、造礁骨巣・淵泥裂孔に住まう瀛種、果ての連島にて穢れを喰す紫種、そしてᛋᛏᚬ ᛚᛚᛅᚢ。
我々人類が様々な媒体で夢見て、想ってきた架空の者たち。それがF文明人だ。
……ここまで書いておいてアレだが、この「○○種」の分類が作中で使用されることはほぼない。何故なら、これらは古い分類で傲慢や嘲りを多分に含んだものだからだ。
彼らは何処から来たの?
よい質問だ。
詳細はいつの日か語られることになるが(そうなって欲しい、頑張ります)折角の機会だ、始まりのことを紹介しよう。
今(2022)より約3300万年前。古第三紀、漸新世の時だ。
この星に巨大樹が降り立った。異空よりの来訪者、二人組は自らを「―フ(F)」星環より降った、と言う。つがいで、雌は「エル・イヴ」。雄は「ドワ・アダム」と名乗る。
既に原始文明を築いていた獣は彼らを外世人と呼ぶ。
外世人は性差が異なると外見も大きく異なる種であった……すなわち、雌は長身でしなやかな筋と淑やかな髪を持ち、雄は短身で頑強な筋と無骨な髪を持つ。
外世人がこの星に入植してから数十万の季節が過ぎた頃、恐ろしい変化……変異が彼らを蝕み始める。
彼らの子供に「雌の体を持つ雄」ないしは「雄の体を持つ雌」という個体が生まれ始めたのだ。これは外世人が種として分かれ始めた、ということを意味し……星を跨ぐ夫婦喧嘩が勃発した。これが1度目の闘乱である。
はい、シリアスはここまで。
「エル・イヴ」=一般的なエルフ、なろう系でよく見る奴
「ドワ・アダム」=一般的なドワーフ、なろう系でよく見る奴
というイメージで大丈夫です。
「○○種」の○○についてですが、名付け親のエルフからみて奇妙に映るほど短い単語となります。
外世人、外の世の人、この外の世とは宇宙のことです。
なのでエルフ(本来の発音としてはエルーフとなります)とドワーフは宇宙人ということになります。
上記の続き? あ、はい。いつか作中で紹介、できるといいなぁ。頼んだぞ未来の私。
いかがでしたか?
私、先日(11/24)にコロナ感染となった影響で中々完成させることが出来ず……最新話はもう少しお待ちいただければと思います。
この記事が少しでも拙作世界の理解の一助となれば、また創作上のネーミング時の参考になれば幸いです。
~おまけ~
・第一部の主人公とヒロインの名の由来
【ヒロシ】
第二次世界大戦中の旧日本陸軍軍人、舩坂弘(ふなさかひろし)より。彼の活躍は有名なので割愛。検索すればそのやばさ、大いに感動するはず。
【ティマドクネス】
哲学者プラトンの著作「ティマイオス」と四元素説を最初に唱えた自然哲学者のエンペドクレスを合体させた名前。もっとも一部文字変していますが。
【翡紅(フェイホン)】
翡翠色の髪と紅色の瞳を持つ子、という意味の名。要は見た目から名付けられた。シンプルである。