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リメイク作第1話試し書き。評価してくれるとありがたいです

首取り物語のリメイク作品を書こうかなと。
一人称にして、裏設定を明確に説明してからの開始。
プロローグだけ書いてみました。

詳しい説明は拙エッセイにて書いています。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860513975333/episodes/16817330648447589508


 第1話:158X年+208X年



 15XX年
 京の都


 御簾越しでの無言の拝謁であった。
 この国の元首? 教皇? 象徴であると通訳は言っていたが、挨拶を交わそうとするも「拝謁」という恥辱的な言葉にふさわしい外交となった。

 当たり前だ。

 ヨーロッパ最強を謳われるテルシオと無敵艦隊。

 これを遥々地球の裏側まで率いて意気揚々と遠征するも、最後にして最大の目的地であるジパングの軍に壊滅的・屈辱的な敗退をしたのだ。


 未開の地を神の恩寵を授けられる地とするために東洋へ派遣された今回の遠征。

 上陸した、ヨーロッパから率いてきた神に祝福されている筈の正規軍と傭兵達8000。それに加えフィリピンで雇い、訓練をした現地軍。
 更には合併成ったポルトガルの現地軍10000。

 これを半数の12000で決戦を挑まれ、包囲殲滅一歩手前で為された降伏勧告。

 同時に発生した海戦において無敵艦隊78隻すべて撃沈された。
 それを聞き、降伏せざるを得なかった。
 屈辱で噛み切った唇が裂けたまま、今でも傷が治らない。


 いったいどうやったら、あの歩兵・騎兵・砲兵・工兵の組み合わせに勝てるのだ? 
 あのような戦術にどうやったら対抗できるのか?

 全く手も足も出なかった。



 このヨーロッパ最強と自他ともに認める、パルマ公ファルネーゼが手も足も出ぬとは!
 
 敵の船は横帆と縦帆を見事に組み合わせ機動力に富み、こちらのカノン砲の射程圏外から強力なカルバリン砲を撃ちまくる。

 稀に近づくことが出来ても、舷側には鉄板が張ってある! 
 あれでは要塞からの焼玉攻撃も通用しないかもしれない。

 このまま全滅すれば折角手に入れたフィリピンやマカオも占領されかねない。
 やむなく停戦条約を結び、今後の正式な交渉を行う事となった。



 その相手。
 この国の実質上の元首。

『太閤様』と呼ばれているらしいが、それは尊称であってなんの役職にもついていないという。

 だがこの者が、ジパングをこのような強国に改革した張本人であると聞いた。
 この地を幾千万の人の血で染めて統一を成し遂げたという。


 どのような悪鬼なのか? 
 この地に住まう悪霊か?

 これから私のいる、この部屋に入ってくる男の顔をしっかりと見て、そのことを子細洩らさず本国のフェリペ2世陛下にお伝えせねばなるまい。

 もし本国に帰る機会があればだが……



 衛兵が会談場所のこの部屋に、その主が入室する旨を高らかに宣言する。
 それを逐一、通訳の修道士ウルダネータがスペイン語に翻訳する。


「これから太閤様が御成りになります。スペイン式の礼でよろしいとの事」


 いよいよ対面か。

 これから始まるジパングとの条約交渉。

 東洋の事について全権を持たされている私がやらねばならん。

 緊張で手が汗でぬれているのがわかる。
 手のひらには爪が食い込む。



「太閤殿下が入室なされます」


 その言葉と共に入ってきた小柄な男は手を高らかに上げ、満面の《《童顔》》でこう言った。


「へろ~。
 おら。ぼんじゅ~る。
 ぼんそわ~る。
 ぼんじょるの。
 すどら~すとびぃちぇ。
 に~はお。あっさら~む。
 や~さす。
 ぼあたる~じぇ。
 めるはば~。
 しゃろ~む。
 あんにょんはせよ。
 じゃんぼ~」



 そして最後にこう聞こえた。





「ようこそ。未開の地へ。

 だいろくてんまおう、
 |政賢《まさかた》の支配する
 《《民主主義国家》》『にっぽん』へ。

 いらっしゃいませ~♪」





 この小男。
 |大胡政賢《おおごまさかた》が、
 これからのスペイン、
 いやヨーロッパに仇名すサタンとなるであろう。



 ◇ ◇ ◇ ◇




「第1号被験者。南蛮との戦を完勝でクリア。第4キャンペーン終了です。こちらへ戻ってくるか最終確認を出します。許可願います」

 運営AIが管制官の私に指示を乞う。

 この犯罪被害者救済事業プロジェクト『ZAMAa』。
 今日では汎用化された世界ジェネレーターシステムを使い、凶悪犯罪の犠牲者の深層心理にこびりついて離れないトラウマ。これを排除するために仮想空間で仕返しをしてもらい、その後記憶を全部デリートして気持ちよく人生を再出発してもらうというもの。
 収益はその『物語の鑑賞』で得られる広告収入。


 第1号被験者は、12歳で凶悪犯に両親を殺され、姉が暴行の末に惨殺。自分も体がクローン技術ですら再生できないほどの障害を追った。
 それでも加害者は死刑にならないのが今の法律。
 これで我慢して生きて行けというほうが酷だろう?

 プロジェクトの被験者第1号の募集があるまでの40年間近く、メタバース内で創作活動をしていた彼。自分が書いていた日本古典ラノベの舞台である戦国時代に行って、強制的に一緒に転生させられた加害者に仕返しをしてやりたいと志願。

 こちらの時間で10年ほど試験運用、データ収集のモデリングとなってもらった。
 この10年間で様々なテクノロジーの進歩があり、被験者の念願であるヒト細胞の完全クローン技術が完成した。

 第4キャンペーンが終了した時期を持って、この医療サービスを優先的に受けられる権利を得た。

しかし……


「出家イベントのエンドロールは見ませ~ん。僕はこのままこっちで生きていきます!」

と来た。

「本当にいいのですね?」

 と思わず聞いてしまった。

「はい~。友達100人どころか100万人くらいできちゃったので帰る意味がなくなっちゃいました。でもね……」

 それでは医療サービスの権利が。誰もが欲しがるものだぞ?

「特典全部返すから、戦死者を行き返らせろ! ダメ?」

 彼にはこちらでの不老不死よりも、向こうでのNPCの命の方が大事らしい。
 まあ、この世界は閉鎖廃棄する予定だから、どう|弄《いじ》っても問題ないか。これも実験だと思えばいい。

「承知いたしました。現実世界との世界線を切断します。支援システムは全て使えなくなります。よろしいですね」

「うん。もう必要ないや」

「では、第5キャンペーンが始まるまでの間、これまでの『あらすじ』として今までを振り返っていてくださいませ」

 AIの声と共に仮想データでできた空間ブリッジが切断されて、彼は島流しになった。

 本人にとってはその島は、すでに自分の故郷なのだろう。
 こちらで誰も友達がいなかった彼。向こうで幸せな人生を送っているのだろう。

 管制官である私は、彼に黙とうをささげてから始末書を書き始めた。



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