第227話:【配置・3】敵をみくびっちゃダメ
1559年4月中旬
那和城松の間
上泉秀胤
次に佐竹の状況を智円殿から説明があった。
「佐竹に行って参ったが色よい返事は今の所貰えず。しかし条件付きではこちらへ寝返ってもよいと」
多くのものが冷笑するかのような表情を少なからず見せている。佐竹の両天秤が潔しと見えないのであろう。
いかぬ。この程度は当たり前ではないのか? この乱世に生きる大名。忠誠を誓う事、同盟を忠実に履行することが良いとは限らぬ筈。どこかで妥協せねばお家の安泰は保てぬであろう。
それが分かっていない者が多い。この大胡が勝ちすぎたか。それとも忠誠は絶対的に守るのが当たり前であるとの価値観を他人にも持っているのか?
いずれにせよ、他者への理解がないと足元をすくわれかねない。後で対策を考えねば。
「その条件とは上杉が越後へ帰る事。その時は宇都宮をご一緒に攻めたいと」
いかにも虫の良い話だ。
そのような事を言うほど、この状況が大胡に不利と見ているのである。佐竹は6000以上の兵を東毛(新田館林桐生方面)に向けている。これを攻めあぐねれば何かやり様がある筈。
「ん~と。じゃあ1月ごとくらいに追加の使者出してみようか。どのくらいかかるかわかんないけど、情勢によっては条件が変わるかもだし」
「しかし、それでは足元を見られるのでは?」
殿は少しの間、髷を弄った後、仰った。
「まあやらないよりもマシっしょ。」
「智円。使えね~な。陰陽師の修行はどうした?」
「佐竹ってやっぱり狡猾かな?」
「見くびられるぞ」
なお原稿が上がり次第、限定公開ノートには全部そのままアップいたしますので3~5日早く読めると思います。
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次話アップはすぐです。
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