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砂城のナイト

あけましておめでとうございます。

短編集、『海底の泡』に『砂城のナイト』を投稿しました。

 砂の城は芸術のメタファーだ。
 それじゃないと生きられない、そういうわけじゃない。すべての身をささげてそれに生きるやつもいるが自分はどうやら違う。そして、芸術の世界もたいして自分を認めていないし必要としていない。
 やっているうちに自分は社会的に切り離されたところにいて、他人の感じている喜びややりがいを自分は感じられていないらしいということに気付く。だんだん自分が創っているものがしょうもない砂山に見えてくるし、まわりの連中が馬鹿に見えてくる。
 普通になりたかった。その他大勢が簡単に手に入れているように見える幸せを、自分も手に入れられると信じていた。
 でも、美しい砂山の虜なんだ。どうしてもまた、砂漠に戻ってきてしまうんだ。隣の蜃気楼の創る砂山が妬ましい。だってそれは美しいから。でも、剣を磨いていない自分には城壁を創ることも、他人の城を崩してやることもできず、ただ明日を漠然と祈るだけしかできない。
 特別になりたかった。城を創りたいじゃなくて、特別になりたいという願望があったせいで、自分の無能さの責任を世界に押し付けていた。中途半端だったんだ。

PS:スマホで流し読みするときに読みやすいかなと思って一行ごとに行間を開けているんだけど、開けないでぎゅっとなっている場合とどっちが読みやすいんだろう。

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