「今話題の映画見た?」
「ミッションインポッシブル?」
「いや……」
「実写リトルマーメイドは観てないわ」
「いや……」
「インディジョーンズ? あれは観たよ」
「ああもう違う違う、鳥のやつ!」
「ああ、『君たちはどう生きるか』ね」
「見た?」
「観たで。あ、迷ってんだ?」
「そうなんだよー。何も情報もなくて判断出来ないし、感想が賛否両論みたいじゃん」
「まぁ不安になる気持ちも分からんでもない」
「面白かった?」
「少なくとも、観て後悔はせんかったで」
「何それ、答えになってなーい」
「面白いかどうかなんて個人差があるからなあ」
「それは分かってるから。正直なところどうなんよ?」
「おもろかったよ」
「そっかー。なるほど」
「でも君が観ても面白いかどうかは分からん」
「それは観て判断する。話の合う人がつまんないって言ったら私もつまらんと思う可能性が高いと思うんだ」
「そう言うのはあるかも」
「で、どう言う映画なのこれ。あの鳥は映画に出てくんの?」
「公式が情報を制限しているからなあ」
「いいじゃん別に。もう公開始まってんだし。もうバレてるよ色々」
「んじゃあ、あんまりネタバレにならない程度の事なら……。うん、あの鳥は出てくるよ」
「あの鳥ってなんなん?」
「アオサギや」
「ほおお」
「結局どう言う話なの?」
「舞台は戦中で、主人公の少年が成長する話」
「話のもとになった『君たちはどう生きるか』の要素って映画にも出てくる?」
「出てくる。詳細は言えないけど」
「へぇ~」
「面白そうかい?」
「まだ分かんない。で、ファンタジー要素とかある? 宮崎映画と言えばやっぱそこは大事っしょ」
「むっちゃファンタジーやで」
「じゃあ見る!」
「でも何で賛否両論、しかもアンチな意見の方が目立つ感じになってんの?」
「それはさ、今までのジブリ映画と同じものを求めたからだと思うよ」
「違うの?」
「少なくとも、子供が観て楽しめる作品ではないかも」
「主人公少年なのに?」
「その展開になるのに説明が足りないんだよ、この映画。分かりやすく言うとテレビシリーズ作品の総集編みたいな感じなんだ」
「物語の隙間を観客が脳内で補完しないといけない系?」
「そそ。だからそう言う知識の応用の出来ないお子様には厳しいのね」
「じゃあ私は大丈夫かな。分かったふりして楽しむのも好きだもん」
「ところで、宮崎映画は好き?」
「うん。どして?」
「この映画は宮崎映画好きなら楽しめる作りになってるから。逆に言うとそこまで好きじゃない人には向かないかなって」
「ふむふむ。宮崎映画好きな人に向けたサービス的な展開があるって事かな」
「そう言う事」
「なるほど、俄然興味が出てきたよ」
「で、映画を見終わって『君たちはどう生きるか』って考えた?」
「いやあ、特には。そもそも、映画って基本『君たちはどう生きるか』って問いかけてきてない? そう言う意味では普遍的なメッセージすぎるんだよね」
「あ~」
「だからこの映画、タイトルが合ってない気がするのよ。『君たちはどう生きるか』はキャッチコピーで良かったんじゃないかな」
「元ネタがそれだからリスペクトしたんでしょ」
「でも原作そのままのアニメじゃないんだから変えていいって。原作のキャラが出てくる訳じゃないんだし」
「風立ちぬだって同じじゃん。原作を参考にして原作のタイトルを使ってる」
「あ、確かに。じゃあアレは宮崎映画の作風なんだなあ」
「取り敢えず今度の安い日に見に行くよ。有難う」
「うん。楽しんできてね」