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魔導少女ぷりん 第22話

 異世界モノのラノベのお約束っぽい城壁都市をあてもなく歩きながら、真宙はぷりんからのレクチャーを受けていた。

「……この街、魔導都市マジルアギスって言うんだ」
(私達は単純にアギスって言ってるけどね。あ、そこの露店のクレープ、美味しいから食べてみてよ)
「え、でも私お金もってな」
(いいからいいから。私の記憶の世界って言ったでしょ)

 常識にとらわれがちの真宙も、強く勧められたので行くだけ行ってみる事にする。お店の前に立った彼女は、メニューが見慣れた日本語で書かれている事に違和感を覚えた。

「あ、日本語だ。でも何で?」
(真宙が読みやすいように改変したのだ)
「へぇ」

 文字が読めると言う事でどのクレープがいいか読み進めていると、お店の人が真宙に気付く。

「あら可愛お客さん。好きなのを言って。私のおごりだよ」
「えっ?」
「ぷりんちゃんには世話になってるからねえ。サービスだよ」
「えっと、じゃあ……」

 本当にぷりんの話の通りにクレープをただでもらう事が出来た。無難にいちごクリームのクレープを作ってもらった真宙は、広場に設置されていたベンチに座って早速かぶりつく。

「美味しい! 私の世界のクレープと同じ味!」
(でしょ。真宙も気に入って良かったよ)

 クレープが美味しかったのもあって、彼女はぺろりとそれを平らげた。小腹が満たされたところで真宙はぼうっと空を見上げる。周りは異世界の風景なのに、空はリアル世界と同じ澄み切った青色で真っ白な雲がのんきに泳いでる。不思議な安心感を覚えた彼女はゆっくりとまぶたを下ろそうとした。

「ちょ、こんなところで寝るんじゃねーよ!」
「ふあ! ごめんなさい!」

 怒られた真宙がその声の主を捜して顔を左右に振る。しかし該当しそうな人影は見当たららない。この謎の現象に彼女は首をかしげる。

「あれ?」
「よく見ろ、ここだ」

 急かされて改めて声のした方向に顔を向けると、そこにいたのは利発そうな黒猫だった。

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