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説明台詞なしSSサンプル その2

「ふぁぁ~あ」
「ねぇ、さっき寝てたでしょ」
「鈴木の授業とか、寝てくれって言ってるようなもんだろ……」
「で、まだ眠いんだ?」
「ほっといてくれよ」
「全く、昨夜何時まで起きてたの」
「寝る子は育つんだよ!」
「あ、そっか、次は英語だもんね。流石に起きてなきゃかぁ」
「だから邪魔すんなよ」
「今からずっと眠ってれば~?」
「うっせ」


「う~ん……」
「うふふ」
「あ、夢?」
「ようこそ、私の部屋へ」
「ここ……どこだ?」
「だから私の部屋だよ」
「お前、何なんだ!」
「何なんだって……失礼しちゃう!」
「えっと……どうすりゃいんだ?」
「無理だよ」
「は?」
「あなたは起きない。私が起こさせない」
「まさかお前、あ、悪魔的なアレか?」
「うふふ」
「いや何でそこ誤魔化すんだよ」
「それは秘密」


「うおおおーっ!」
「ちょ、何やって……」
「痛っ……くない、やっぱりそうかよ!」
「何をやっても無駄よ」


「おい、俺の授業で寝るとはいい度胸じゃねーか」
「おい、聞いてんのか!」
「それじゃあ、気合を入れてやる! 起きろおっ!」
「先生、それ以上は……!」
「おかしいぞこいつ、全然起きん。病気か何かじゃないのか?」
「私、保健室につれていきます!」
「あ、ああ……頼むぞ……」
「本当に眠ってる。一体どうしちゃったの?」


「で、どうしたいんだ?」
「話し相手になってよ」
「……」
「ここから出たくないの?」
「お前は何者なんだよ」
「ひ・み・つ♪」
「何話せって言うんだよ!」
「何か面白い話聞きたいな」
「別に何もねーよ」
「じゃあ何が好きなの?」
「げ、ゲームとか?」
「じゃあそのゲームの事教えて!」
「あ、ああ……えぇと……」


「ふぅん、何をやっても起きないと……」
「何とか出来ます?」
「こう言うのは、多分、医学の領分じゃないな」
「え?」
「知り合いに詳しいのがいるから頼ってみる。君はもうお帰り」
「よろしくお願いします!」
「さぁて……」


「も、もう話す事はないぞ……」
「えー」
「早く俺を戻せよ」
「や!」
「は?」
「もうずっとここにいよ?」
「いや俺は帰りたいんだよ!」
「だって君は寝るのが好きなんでしょ」
「だから家で眠りたいんだよ。今どうなってんのか分かんねーけど」
「寝てしまえばどこで寝てても一緒じゃない」
「う……」
「だからずっと寝ていましょ」
「あーもう! 俺は起きたいんだよ! 起きた上で寝たいの!」
「は? 何それ!」
「起きて楽しい事して、疲れたら寝たいんだよ!」
「絶対逃さない。ずっと一緒にいて」
「そうか分かったぞ。お前、俺を呪ったんだろ」
「さてそれはどうでしょう?」
「俺がずっと眠ったままだったとしたら……原因不明の病気扱いになっちまうかもじゃねーか!」
「それでいいじゃない」
「いや、良くない! 俺は起きる! 気合で起きてやる!」
「じゃあやってみてよ。見ててあげるから」
「ふんぬうう!」


「あーこれ、結構ヤバいね」
「難しい?」
「用意してた札じゃ無理だな。ちょっと値は張るけど……」
「ちょい待ち。まさか私からたかろうとしてないか?」
「無理やり起こすならそれなりの対価は必要だろ? タダ働きするつもりはないぞ」
「もういい、お前に頼ろうとした私が馬鹿だった」
「何だよ~。別にお金以外でもいいんだぜぇ~」
「そっちの方がよっぽど嫌!」
「ちぇ、じゃあ貸しでどうだ?」
「いやいい、自分でやる」
「止めとけって、お前じゃ無理だ」
「私がやばくなってもお前はそこで見ているといい」
「わーったよ、本当術士扱いが上手いな……」


「ダメだ……何でだよ! 俺の夢じゃねーのかよ!」
「そだよ、ここは私の夢。だから全ては徒労」
「マジかよ」
「だからもうあきらめてよ。私と一緒にいよう」
「いや、あきらめない。あきらめるもんか!」
「どうしてそこまで……」
「今夜見たいアニメがあるんだよ!」

「ふうううう!」
「へぇ、直接アクセスするんだ。大丈夫? 手伝おうか?」
「今は黙っててくれ……」
「……」
「何で動画を撮る!」
「まぁ、後学のため?」


「ん? 地震?」
「あははは! 私の世界で地震なんて……嘘?」
「て、天井が割れるぞ!」
「キャアアア!」
「見つけたああ!」
「何だ、何なんだー!」
「出てけー!」


「うわっ!」
「何っ?」
「拒絶された、こんなの初めてだ……」
「嘘でしょお……」
「こうなったらあいつを呼ぶしかない」
「もう来ておる」
「え? いつの間に」
「儂に任せんしゃい」


「さっきのは何だったんだ」
「さぁね~」
「俺、思うんだけど、さっきには俺を起こそうとした誰かなんじゃないか?」
「だとしたら?」
「おーい! 助けてくれー!」
「無駄だってば」
「いや、無駄じゃない」
「ええっ、いつの間に……」


「いい加減にしてくれんかの。お主のワガママは度が過ぎるんじゃ」
「ふ、ふーんだ」
「あれは、お前の知り合いなのか?」
「知らない!」
「そっか。……待てよ? 部外者が来たと言う事は出られるんだよな」
「その通りじゃ、行くぞ!」
「ま、待って!」


「私、出さないよ!」
「うわっ!」
「しょうがないのう。お仕置きじゃ!」
「キャアアア」
「し、死んだ?」
「死にはせんよ、気絶しただけじゃ。それより儂について来い」


「あ……」
「良かった、起きたか」
「保健室……何で?」
「授業中、起きなかったんだと。保健委員が連れてきたぞ」
「あ、有難うございます」
「礼なら儂に言わんか」
「うわあっ! 何で?」
「君が見ていたのは夢であって夢じゃないと言う事だ」
「マジすか」
「で、どうだ? もう平気か?」
「そうですね……」


「あははは! パンならあるぞ、ほら!」
「これ、いいんですか?」
「ああ、ここで食べても食べながら帰ってもいい」
「じゃあ、食べながら帰ります」
「気をつけてな」

「あいつ、既に魅入られとったぞ」
「やっぱり、もう手遅れでしたか」
「乗りかかった船じゃ、お前が導いていけ」
「分かりました、師匠」


「今日はとんでもない一日だった」
「ふふ、いらっしゃーい」
「なんでだよっ!」

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