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伊坂幸太郎「逆ソクラテス」について

どうも、皆さんこんにちは。名無之です。

今日は、久々に面白い小説があったので紹介しようと思います。

と、言っても、発表から随分の時間が経っていますので、ご存じの方も多いと思います。
伊坂幸太郎さんの「逆ソクラテス」です。

人間誰しもが持つ思い込みだったり、先入観をテーマにして小学生を中心に話が展開していく短編集です。バイアスという見えない存在に気づき始める小学校高学年という絶妙な年齢層を主人公に物語が進みます。
物語それぞれが繋がっている、というわけではなく(一部、登場人物は共通しているので、世界線は同じかな?)いわゆる連作短編、というやつです。

最初は長編だと思って読んでいたので(得てして、僕はあらすじを読まずに読み始めることがあります)、「あぁ、長編じゃないのか」と少しがっかりしました。
というのも、第一話がとてもよくできていたのです。いわゆる勧善懲悪モノという王道展開を、未来のある視点から俯瞰して回想しているというスタイルをとっており、初めて子供を主人公にした小説を書くなら見本にしたいような手法を用いていました。
だからこそ、ここから主人公たちがどうなるのか、また現在の主人公がどうなっていくのか、楽しみにしていたので、連作短編だと気づいた時にはいささかショックを受けました。

ですが、そのショックはものの見事に払拭されました。
理由は明々白々。他の作品が面白かったからです。リレーで二軍が一軍に勝つ反骨心、貧乏人の見た目をしたお金持ち、凶悪犯に懸命に立ち向かう勇気などなど。最後は主人公自身が先入観から解放される物語が入っており、先入観というものについて包括的に取り扱った作品だったと思います。

何より、僕がよく小説を読んで嫌がっている「自分語り」がほとんどありませんでした。
詳細はまた別の機会で話しますが、別段重要でもないのに、ダラダラダラダラと過去だったり補足情報を語る小説が数多くあります。まあ、小説という媒体である限り致し方ない面もあると思いますが、多すぎれば読者にとってノイズにしかなりません。
本作ではそれを最小限に抑えていたので、とても読みやすかったです(少なくとも僕にとっては)。

ぜひ、まだ読んでいない人は読んでみてください。



それでは、また。

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