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【読書感想文】小川洋子「博士の愛した数式」(ネタバレあり)

お久しぶりです。そして明けましておめでとうございます。名無之です。本年も名無之権兵衛をよろしくお願いいたします。
さて、実は今回紹介する本は一週間前に読み終わっていたんですけど、時間がなくて今日更新になりました。このことについては後ほど触れるとして、まずは読書感想文を書いていこうと思います。

あらすじ:家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。彼は、息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。

おすすめ度:上の上(理系の人が読むべき作品)

久しぶりに言葉が美しいと思える作品に出会えました。出会えたと言っても、これは20年以上前に出版されているので、僕らが見つけたという表現が正しいのでしょう。
最初聞いた感じは数式の美しさを文学に落とし込んだものだと思っていました。それだけでも十分興味を持つのですが、なんと博士の記憶が八十分しかもたないときた。これもこれで一つの物語を描くの十分の設定です。その二つを反発させることなく、むしろ虚数空間で融合させた彼女の手腕には平伏するばかりです。いや、本当に素晴らしい。
特に僕は理系の人間なので、数式の持つ意味なんてのも理解しています。彼女はそこのところもしっかりと取材しているので、抜け目なく、それでいて独自の解釈を加えてくれる。正直、ページが最後になるのが信じられないほど、いつまでも続きそうな話でした。
もちろん、ちゃんと紆余曲折・起承転結はあります。けど、昨今のエンタメ作品にみられるような激しいものではありません。凸凹も傾斜も感じさせないほど滑らかな道なので、読んでて少しも苦労はありませんでした。それがこの「いつまでも続きそう」と感じさせるのかもしれません。
実は、この小説のおすすめ度を権兵衛と議論した時、権兵衛は「上の中」にしろと言ってきました。普段は「そうですか」と従うのですが、この時の僕にはわかりました。僕の長年の経験で分かるのですが、明らかに悔しがっている様子だったのです。そう、権兵衛は嫉妬していたのです。それを僕に見透かされたので、素直におすすめ度は上の上になりました。ただ、これは数学の知識が幾らか必要です(もちろんなくても全然楽しめますが、あったほうがより一層です)。なので、上の上でも、下の方だとお思いください。

というわけでいかがでしたでしょうか。ここ最近、ゆるキャンもみて「上」作品が多くなってきました。良作に出会えることは良いことです。大切なのは、それらを上回れる作品を作り出すことですから。
さて、冒頭にも書きましたが、ここ最近忙しくなってきました。何を隠そう、僕には卒論があるのです! なので、一月はこれくらいにして、一段落したらまとめてあげようと思います。楽しみにしてる方はしばしお待ちを。

それじゃあ、また!

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