俺の目の前にコンビニが現れたが、ゆらゆらと蜃気楼のようだ。
見上げると看板には、『サイコーマート』と書いてある。
「さ、入って」
色っぽいお姉さん天使のガラテアさんが、ヒール付きのサンダルをカツカツ鳴らして、コンビニの中に入っていく。
俺も後に続き、蜃気楼のようなコンビニに入る。
コンビニの中は、いたって普通のコンビニだった。
お弁当、ドリンク、お菓子、雑誌コーナーと、どこにでもあるコンビニと変わらない。
レジ前のホットスナックコーナには、美味しそうな唐揚げや中華まんが並ぶ。
天使のガラテアさんは、レジ前カウンターに置いてあったエプロンを頭に通し、腰の部分でヒモをキュッと結んだ。
反則級のメロンが強調されて、俺は目のやり場に困る。
「私は、ここで店番をしているの。このお店は、あなたたち転移者をサポートするために、神様が作ったのよ。ご覧の通り一日一回、お店に入って買い物できるわ」
天使のガラテアさんは、そういうとキセルを口にした。
「火……ついてませんよ」
「禁煙中よ。坊や」
ガラテアさんは、ニコリと笑う。
泣きぼくろが色っぽいな。
見とれてた。
俺は慌てて話をする。
「それで、えっと、このコンビニで買い物が一日一回できるんですね?」
「そう。ただし、お金は使えないわよ」
「えっ!?」
お金が使えないとは、どういうことだろうか?
「日本のお金も、この世界のお金も使えないの。このお店では、ポイントで買い物するの」
「ポイント?」
「そっ。魔物を倒すとポイントがもらえるのよ」
ガラテアさんにポイントと言われて気が付いたが、商品の棚にはポイント表示がある。
ドリンクやパンは百ポイント、お弁当は五百ポイント前後だ。
一ポイントが、だいたい一円くらいのレートらしい。
「コンビニで買い物がしたければ、戦って魔物を倒せってことか……」
「良く出来たわ。坊や」
「じゃあ、俺の行動は、ガラテアさんに筒抜けってことですか?」
「戦闘に関してだけよ。どんな魔物をどれだけ倒したかは、私も神様もわかるようになっているわ」
「サボれないってことですか……」
「がんばって」
ガラテアさんが、ヒラヒラと手を振る。
魔物との戦闘は命がけになるだろう。
ガラテアさん軽いノリに、俺は憮然とした。
「そんなむくれないで。良いこともあるのよ」
ガラテアさんは、カウンターの下からチラシを取り出し、俺に渡した。
チラシにはポップな文字で、こう書いてあった。
『初回エントリー特典 五百ポイントプレゼント! アイテムをゲットして、スタートダッシュ!』
どこかのゲームみたいだ。
五百ポイントだと、お弁当を買ったらなくなってしまう。
俺はお菓子でも買おうかと店内を見回した。
するとカウンター前に気になる商品を見つけた。
カウンター前の特売コーナーに、布製の無骨なリュックサックが沢山置いてある。
『初心者にオススメ! 冒険者セットがお買い得!』
と手書きポップが添えてある。
「このリュックは、何ですか?」
「このリュックは、マジックバッグで中に色々と入っているわ。悪いこと言わないから、三百ポイント使って、このリュックを買っていきなさい」
へえ、見た目は普通のリュックサックだが、マジックバッグなのか!
俺はリュックサックを手に取って、口を開けて見た。
リュックの中は真っ暗な空間が広がっている。
「そこのボタンを触ってご覧なさい」
ガラテアさんに言われた通り、リュックサックのボタンに触れてみる。
すると、リュックサックに入っているアイテム一覧が頭の中に流れ込んできた。
マジックバッグの説明書。
水、携帯食が十日分。
テント、寝袋、鍋、薪、ロープなどのキャンプ用品。
下着や服などの着替え。
革製のブーツ、革鎧、剣、ナイフなどの装備品。
「これはありがたいですね! 買います!」
「正解よ」
ガラテアさんはレジを操作して、マジックバッグのリュックサックをピッと読み込ませた。
「ここに手を置いて」
スマホを置いて決済するシステムの上に右手を置く。
シャリンと音がして、決済が完了したようだ。
ガラテアさんから、レシートを渡された。
残りが二百ポイントと印字されている。
「さあ、そろそろ時間よ。がんばってね」
「え? もうちょっと買い物を……」
「また明日ね」
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試し書きは、ここまでにします。
試し書きをして感じたのは、ステータスが邪魔かなということ。
もう、一つチート要素を重ねて、そこでステータスを重要な役割を果たさせる構想でいた。
しかし、チート要素はコンビニ一つに絞って、便利グッズを買える、どら○モン的な方向性がスッキリするかもしれない。
異世界転移物になるので、人気を出すのは難しそう。
それにコンビニに入店できるでは、通販チートやスキルポイントチートの二番煎じ感が否めない。
コンビニを扱うなら、コンビニ経営の方が独自性が出せるか?
ボツよりの保留。