俺の目の前には、大平原が広がっている。
空が真っ直ぐに広がり平原が続く遥か先には、地平線が見える。
「ここは……!」
「ようこそ! 異世界へ! 町が見えるでしょ? あそこを拠点に活動して欲しいのです」
俺と不動産会社のお姉さんは、丘の上に立っている。
俺たちの足下から街道が延びていて、街道の先には大きな町が見えた。
城郭都市とか、城塞都市ってヤツだ。
大きな城壁が町を取り囲み、町の中央には一際高い城が建っている。
城壁の外にも町は広がっていて、無数の住居が見える。
よほど大きな町なのだろう。
「異世界……」
見たことのない風景に圧倒されて、俺の口から思わず言葉が漏れる。
家々の赤い屋根瓦は日本では見ることがない。
城の尖塔は深い青で、空に広がるスカイブルーの中、誇らしげにそびえ立つ。
「じゃあ、後はこの人に聞いて下さいね! 天使のガラテアお姉さんです! では、後はよろしくお願いいたします」
「えっ!? ちょっと!」
シュン! 鋭い音を残して、不動産会社のお姉さんは消えた。
後に残されたのは、俺とガラテアさんと言う天使のお姉さんだけ。
このガラテアさんは、色っぽい美人お姉さんだ。
キレイな肌、豊かな胸、張り出したお尻、スラッとした足。
カールした金髪に、けだるそうななタレ目が色っぽい。
背中には大きな白い羽が生えていて、なるほど天使だ。
ほっそりとした指でキセルを挟み、けだるそうな話し方をする。
「よろしくね。坊や」
「よろしくお願いします。あの……、俺は坊やじゃありません」
「そう。女を知っているのね」
「いえ……」
何の会話だよ!
ガラテアさんが俺の反応を見て、クスクス笑う。
「さ、じゃあ、坊やに色々教えなきゃ」
「左手を見てご覧なさい」
「左手ですか……あっ!」
俺は左手を動かしてみた。
すると、左手の上に下向きの三角形『▽』が浮かんでいる。
「えっ!? この三角は何ですか!?」
「ステータスと言ってみて」
「ス、ステータス? おおっ!」
俺の左手の上に、ゲームでみたことのあるステータスが現れた。
**ハヤト・ヒロハラ**
- レベル: 1
- HP: 100
- MP: 0
- 攻撃力: 20
- 防御力: 10
- 素早さ: 30
- 魔力: 0
- 運: 10
- スキル: ステータス コンビニ入店(一日一回)
色っぽい天使のお姉さんガラテアさんの説明によると、心の中で念じてもステータスを見ることが出来るし、ステータス表示を閉じることも出来る。
だが、黒い下向き三角形『▼』は、ステータスを見ることが出来ないそうだ。
天使ガラテアさんの頭の上に黒い下向き三角形が見えたので、試しに『ステータス!』と念じてみたが、『ブブッ!』とエラー音が聞こえた。
「女の秘密を探ろうとするもんじゃないわ。坊や」
「すいません……」
それより、俺は『ステータス』で気になっていることがあった。
ステータスのスキル欄にある【コンビニ入店(一日一回)】とは、何だろう?
あまりにも異世界にそぐわないスキルだ。
「ガラテアさん。俺のスキルに【コンビニ入店】というのがあるのですけど……。これ、何ですか?」
「試した方が早いわよ。コンビニ入店と言ってちょうだい」
「えっと……、コンビニ入店? うわっ!」
俺がコンビニ入店と口にすると目の前の空間が歪んで、コンビニが現れた!