苦虫うさる

叔父である諒ちゃんに、幼い恋心を寄せていた真希。彼女が成長するにつれて、二人の関係には微妙な揺らぎが生じてくる。

　はじめてのバイト代で、父親を買った。三月、まだ肌寒い晩だった。 　観音通りとかいう妙な名前で呼ばれる売春通り。その奥の方で、街灯から少し外れた薄暗闇に、父親は立っていた。目の前…

　兄貴とはじめてキスみたいなことをしたのは、俺が高1で兄貴が高3の冬だった。

上海租界の片隅にある怪しげな事務所。そこは死者の亡骸に魂を戻して事件を解決する「招魂探偵」謝霊が営む探偵事務所だった。 イギリス人商人モリソンの使用人として働く張慧明は、主人の…

神奈川県、鎌倉市と逗子市の間にあって、平成の大合併に取り残された海沿いの街、逗浜（とうはま）町。 その逗浜西高校に通う天文部員の２年生、田山斗和（たやま・とわ）は夜中に月の観察を…

セックスでしか他人とコミュニケーションを取れないタツキが本気で恋をしたのは、妻がいる地味な地方公務員、清水だった。

故郷を捨て、観音通りの売春宿に駆け落ちをしてきた銀子と紅子。 　彼女たちを待つ、駆け落ち、その後、とは。

その藪の中には決して立ち入ってはいけない。 因果が巡り、念が積もる。 男が向かった藪の向こうには、一体何が——。 百百百百様主催、『境界アンソロジー』に寄稿した作品です。

それは、夏休みに起きた殺人事件だった。――千草にこき使われていた奈津は、木村努との出会いによって、千草に殺意を抱くようになる。

　それは始業式。夏休みの思い出の絵を、提出するときに起こった。 　福永鈴花の隣の席、前川進ノ介が、突然彼女の絵に水筒の水をかけ、破りはじめたのだ。 　驚くクラスメイト達が止めよ…

ヒモ稼業にいそしむ海里には、手を出してはいけない『禁猟区』がある。

真夏だった。 　覚えているのは、それくらい。 　停電した真夏の夜、手探りでキスをした部屋の隅。 　俺から迫ったわけでも、相手から迫ったわけでもなく、キスは二人の真ん中でした。 　…

近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。

　戦後の赤線地帯の名残を引きずり、街娼や男娼、ストリップ小屋や覗き部屋など様々な性風俗が入り乱れる通りがある。　　　安価に女体(時には男)の観音様が拝めるということで観音通りと称…

女を売り買いするのが商売の真澄には、忘れられない三人の女がいる真澄が女をただ一度抱いた男に関わる女たちである。

女を売り買いする女衒稼業で名を上げた関崎直巳。彼が扱った女の中で、忘れがたい女が三人いる。 　晴海楼の空蝉花魁と明石花魁、初音花魁。 　どの女も、直巳がただ一度抱かれた男に関わる…

両親を亡くし、天涯孤独になった１０歳のもも乃を引き取ったのは、母が経営していたクラブの黒服、奥谷だった。 首と手に鎖の刺青を入れたもとやくざの奥谷と、会ったこともほとんどない母に…

ヤリちんの兄と二人で暮らす夏来は、ある日兄の部屋で、『兄貴の本命』である男性、要と遭遇する。

「抱いてよ。じゃなきゃ私もう客は取らない」「お前は客を取るよ。死ぬまで取る。そういう女だろ」　娼婦の妹とポン引きの兄の話