陸奥国のとある豪族の屋敷。
女官部屋で、十一人の女官たちが寄り集まっていた。
「『蘇芳と梓弓』、新作できたわよ。」
「ふぉ〜、聴かせて!!」
「こほん。……昔、ふたりの壮士《をとこ》あり。貴《たふ》とき男、歳は十五、風姿颯爽《ふうしさっそう》、麗しき容貌なり……。」
───昔、ふたりの男がいた。
貴き男は、歳は十五、結い髪も爽やかに、みやびで麗しい容貌だ。
その従者、歳は十五、赤ちゃんの頃から共にいる男は、このところ、おのが主を見るにつけ、心がざわめき、ときめく心地を抑えることがかなわなかった。
貴き男は何も知らず、遠乗りに従者を誘う。
誰もいない野原で、貴き男は、
「天気が良い。気持ち良いことだ。」
と自ら大地に寝そべった。
若き従者は、無防備な主の上に覆いかぶさり、
「いつの日からか、大川さまを恋い慕う気持ちが募り、夜、寝床についても、寝返りをうち、思い悩むまま夜を明かしています。
大川さま、将来、妻を娶る前に、オレの……。」
「むはあぁぁぁぁぁぁあっきょ───!!」
「ちょっと、若大根売《わかおおねめ》、うるさい!」
※「蘭契ニ光ヲ和グ」には一切関わりありません。
「蘭契ニ光ヲ和グ」
第二章 霜結ふ檜葉
第三話 オレは草笛を吹ける
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