「釣りキチ」という言葉がある。
私は釣りキチである。
1月2月は寒いし釣れないから行くまいと12月には思っていたのだが、今日も釣りに行き、寒い中粘って1匹だけ釣った。まるで修行のような所業なのだが、やめられない。またやっちまったあ。
ところで近年、「キチ(ガイ)」や「狂」は使わない方がよい言葉になったようである。しかしながら「釣りキチ」をどう言い換えればよいのか、私にはわからないのだ。これほどしっくりくる言葉はない。釣り中毒? 意味的には合っているが、完全にニュアンスが変わってしまっている。
(私の認識では)「中毒」という言葉はまだ使っていいようだが、「中毒」に「キチ(ガイ)」という意味が加わったら、近いうちに使用自主規制用語になるのではなかろうか。
(私の記憶が確かならば)司馬遼太郎の著作のどこかに吉田松陰か高杉晋作あたりが「狂」という文字を好んだと書いてあった(私の記憶は確かでないことが多い)。山縣有朋は狂介と名乗っていた時期がある。「狂」や「キチ(ガイ)」にはなにかしら前向きなニュアンスがあるのだ。「狂」でなければ物事を成し遂げることはできないというような含意が。
私はコンテスト用小説では「狂」をなるべく使うまいと考えている。しかし死ぬまで「狂」という文字を好きでありつづけるであろう。