今回、初めてこむら川に参加させていただきました! 楽しいお祭りでした! 様々なジャンルの面白い小説が読めて、しかも自分の作品に丁寧であたたかい講評をいただけるなんて! 本当にありがとうございました!
第五回こむら川朗読小説大賞には、2作品エントリーさせていただきました(「水底に棲まうもの」「橘姫異聞」)。
今回のはどちらも、実は10年以上、ぼんやり「書きたいなあ」とだけ思っていたネタだったので、形にできてよかったです。本当にこむら川のおかげです……!!
・水底に棲まうもの
美しい遊女に心奪われた兄、その弟の視点から書いていたこのお話なのですが、当初は弟ではなく「妹」で考えていました(主人公の髪を女が梳かす描写があるのはその名残)。何年も何年もうんうん唸っていて、でも上手く形にならず、そのうち諦めて放置していました。今回のこむら川のレギュレーションが「男性の一人称」だったため、では女性ではなく男性にしてみよう、と「俺」の語りにした途端……あらふしぎ! 物語が動きはじめました。
あれを書こう、これを入れよう、と考えて、おそらく5000字ぐらいになるかなーとぼんやり想定していたのですが、書き上がってみると、文字数下限の3000字ギリギリで……案外書けないものなんだなあと……。そのあたり、講評でいただいた「女を人魚であると『俺』が判断した根拠が薄い」というご指摘に如実に現れていると感じています。もう少し、描写を厚くしてよかった。自分で書いているだけでは全くわからなかったので、講評をいただけて本当によかったな、とひたすら感謝しております。
・橘姫異聞
虫を(殺めるのが)好きなお姫様と、それに仕える虫取の少年のお話でした。これもまた、何年も構想だけはあったのですが、何度書き出しても上手くまとまらず……でも「水底に棲まうもの」を書いたことで「あれ? あっちがいけたなら、こっちも出来るのでは?」と思いたち、書いた作品です。
書いていて地味に難しく、またクリアするのが面白かったのは、虫取りの方法でした。平安時代……あっ捕虫網ないじゃん! どうする? から考えて、手でも取りやすそうな虫を選んで描写したり、トラップを工夫したりしました(ライトトラップ→かがり火、ベイトトラップ→食器に食べ物を入れて埋める)。
こちらもまた「今度こそ6000字ギリギリぐらいになりそうだな……!」と思っていたら、実際には4000字ちょいで「あれ?」となりました。字数を考慮に入れて、カットした部分もだいぶあるのですが(主人公が初めて橘のお屋敷に伺った時の話とか、姫が自分の婚約者をトリカブトで殺すとか、炊屋の女の子と主人公との間の淡い思いとか)、それは多分入れなくてよかった。主軸の部分の描写をもっとできたのではないか、と思います。それこそ、講評でいただいた「誰に向かって語りかけていたのかを明らかにすると、物語に深みが出る」というご指摘に、なるほど、と膝を打ちました。プロットをもう少し練り込んでから書いた方がいいのかもしれない……。
・その他
自分としては、どちらの作品もジャンルとしては「恋愛」のつもりで書いていたのですが、いただいた感想や講評で「ホラー」とおっしゃって下さる方が多く……そうなのかー。やはり他の方々に見ていただく、ということは本当に大事なんだな、と思いました。ホラーを意識せず、あんまり気負わず、また恋愛作品を書いたら、やっぱりまたホラーになるのでしょうか? 我が事ながら、ちょっと面白いな、と思っています。
・今後について
長年抱えていた作品を形にできたので、やっぱり長期に渡って抱えている、あれもいけるかも? これも書けるかも? という気持ちになっています。レウコクロコリディウムが大乱舞するSFとか、鎌倉時代を舞台とした伝奇物(夫との合作)とか……。いろいろ挑戦してみたいです。