主人公の桐生孝一は、不思議な夢をみた。
寒空の下、一人きりで帰宅のためのバスを待っている。
 ようやくやって来たバスは、今まで見たこともない鮮やかな朱色に彩られていた。
 不審に思いつつも、乗り込んでしまった孝一。
真っ暗なトンネルを抜けた先に待っていた世界は、異次元への入り口に過ぎなかった。
 時空を超えた世界で、孝一は今は亡き命の恩人と渡良瀬橋のたもとで再会した。
 孝一が高校時代、部活終わりによく通っていた
焼きそば屋の店主の尾瀬梅吉だった。
 梅吉は孝一が高校を卒業した春、不慮の事故で呆気なく命を落としたのだった。
 束の間の再会を喜び合う二人だったが、自分が死んだ事を受け入れられずにいる梅吉は、再びあの忌まわしい事故を再現して見せたところで夢から醒めた孝一。
 目覚めた場所は自分の部屋ではなく、行方知れずとなった幼なじみの武尊のアパートの一室だった。
 ある事件をきっかけに、武尊は行方不明に。もう一人の幼なじみである真琴は、もうこの世にはいない。
 主人を無くしたアパートで、暫しの回想録に想いを馳せる孝一。
 楽しかった思い出が脳裏を過ぎるたびに、忌まわしい事件のフラッシュバックが、すぐ後を追いかけてくる。
 決して消える事のない負の記憶が、今もなお、孝一を苦しめていた。