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近況報告 +おまけ付き

長らく放置しており申し訳ございません。
ようやく連載の目処がつきましたのでご連絡させていただきます。

新連載は兼ねてよりご報告しております通り、お仕事シリーズの第三弾『アクアリネアへようこそ』となります。

現在物語は9話まで書き終えており、この後もう一度読み返して誤字や微調整の確認はするのですが、大まかなものは出来上がってまいりました。

一時期は『まおよめ』の短編で頭がいっぱいでしたが、プロットを書き終えた段階で一度書き上げた短編をもう一度書くのもどうかと思い、一旦保留とさせていただきます。

どうやら一つの物語を書いている途中で、別の作品に手をつける事は私には無理のようでした(>_<)

長らくお待たせしたお詫びとしまして、『まおよめ』の没ストーリーを載せておきますので、おヒマな時にでもご賞味ください。



 私はなぜここにいるのだろう。鼻をつくような甘い香りにただ豪華に見せただけの薄暗い部屋。多少暴れても落ちそうにない大きなベットからは、私を繋ぐための鎖が伸びている。

 あぁ、ここは私を閉じ込めるための部屋なんだ。だけどボーっとなる頭の中で理解は出来るものの、上手く思考がまとまらない。
 時折口にマスクを付けた幼い女の子が部屋へと入っては、私の体を拭いたり散らかったゴミを清掃していくが、そんな様子すら虚ろな目でただ見つめることしか出来ない。そんな彼女が私の元へとやってきたのは一週間前だっただろうか。
 親が借金を作ってしまい、その支払いの代わりにこの屋敷へ連れてこられたんだと泣きながら教えてくれた。たしか名前を聞いたはずなのだが、今の私にはそれすらも思い出せずにいる。

 私がこんな状態になっている原因、それはこの部屋に漂う甘い香りと毎日欠かさず飲まされている謎の薬。
 詳しくは知らないが多分麻薬のようなものなんだろう、この匂いを嗅ぐと気分が高揚すると同時に淫らな気分に浸ってしまう。
 本来なら私のような酷い状態にまではならないのだろうが、毎日飲まされ続けている謎の薬のせいで、思考はまとまらずまともに体を動かす事もできない。
 やがて謎の薬の効果も徐々にうすれていくのだが、その時には体は疲れきっており深い眠りについてしまう。そして昼下がりに目を覚ました時には意識はハッキリとしているのだが、夕方の仕事前に再び謎の薬を飲まされ今の状態へともどってしまう。

 もうおわかりであろう、私が働くこの屋敷は俗に言う娼婦の館。薄っぺらく肌面積がすくない妖艶なドレスに、首には何処へ逃げてもすぐに居場所が分かってしまう奴隷の首輪。しかも無理やり外そうものなら首から上が吹っ飛ぶ優れものだ。
 そんな私は来る日も来る日もこの部屋へとやってくる男たちに抱かれ犯され、玩具のように弄ばれた。
 これでも此処へと連れてこられた時には其れなりに抵抗もしていたのだが、泣いても叫んでも誰も救いの手を差し伸ばしてくれず、か弱い私が足首に繋がれた鎖を断ち切れる訳もなく、さすがにこんな状態が一年も経つ頃には立派な娼婦が出来上がってしまったというわけだ。

 唯一の救いは避妊薬を飲まされているお陰で、見知らぬ男どもの子供が出来なかったという点なのだが、当然この処置に感謝するつもりは毛頭ない。
 この店の主人からすれば商品が下手に妊娠なんてししてしまい、店の稼ぎが減ると困るという点だけで、そこには慈悲や温情といった感情は一切存在していない。

 隣の部屋から抵抗する若い女性の声が聞こえてき、それに対して男性は歓喜ともいえる声で少女を無理やり制圧していく。
 私のような熟練者にとっては抵抗が無意味だということは理解できているが、まだ連れて来られたばかりや、現実が受け入れられない少女に取っては耐え難い状況なのだろう。私だって未だ受け入れ難い気持ちもある。だけど、私にだけ与えられたこの部屋と毎日飲まされている薬のせいで、それすらも許してもらえないのだ。
 彼らにとって私は特別な人間。この娼婦の館で一番の売れっ子でもあるが、下手に私が自身の身の内を暴露し、良からぬ噂をたてないためにもこんな処置をされている。
 
 彼らは今どんな気持ちでいるのだろうか。私の事など既に忘れてしまったのか? それとも今の私を蔑みながら笑っているのだろうか?
 少しでも罪悪感が残っているのならば、今すぐ私の様子を見に来てくれればこの手で殺してあげるのに。




「どうされたのですかお父様? そんなに慌てて」
 あれは夏の暑い日の昼下がりだった。
 私はお母様の後を継ぐべくある職種の修行をしており、今は昼食と昼の休憩をとるべくお母様と共に屋敷へもどいたところ、慌てた様子でお父様が帰って来たのだ。

「すまんなアイリス、アーシャはいるか?」
「お母様ですか? いまはお部屋の方にいらしゃると思うのですが」
 お父様はこの国で働く役人の一人。しかも国王様の側近と言うのだからその地位がどれだけ凄いかは理解してもらえるだろう。
 そんな一人娘の私は正しく箱入り娘だったのだと、今なら十分すぎるぐらい理解出来る。だからと言って教養や礼儀作法、私のお世話をしてくださっている使用人達への感謝の気持ちを忘れた事など一度もない。
 お母様が特殊な仕事だった事もあるが、私も其れなりに国民達に顔が知れ渡っているし、隠れファンクラブなるものが存在しているのも聞いている。

 自慢じゃないが私は自分の容姿に自身があるし、性格は穏やかで人当たりも良く多くの人たちからも慕われており、貴族や他国の王族からのお見合いの話は尽きた事がない。
 それと言うのもお母様の特殊な職業のせいではあるのだが、それより前に説明しなければならないのがお母様がいる今の立場。
 実は元王女様であったお母様は、この国の王様でもあるウェッジウッド王のたった一人の妹。つまり私は王妹《おうまい》の娘であると同時に姫でもある。
 これで少し話私の立場もわかってもらえただろうか。

 そんな私がなぜ娼婦などという仕事に就いているかといえば、そこには思い出したくもないあの忌々しい出来事を語らなければならないだろう。

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