小説家にとって、読者は何より大切なものです。いくら本のできがいい、と思っても、売れなければ意味がありませんし、ときには、編集者でさえ気がつかなかったミスを、指摘してもらえることがあります。
ふっ、と思ったのは、私の代表作と言える『メイド刑事』です。つい私が、メイドの台詞で「とんでもございません」と書いてしまったのです。そうしたら、以下のような内容のお手紙をいただきました。
「とんでもございません」ということは、『とんでもございます』ということになる。『とんでもありません』でも、『とんでもあります』があるのか、ということになる。細かいことですが、お気をつけ下さい」
あっ、と思いましたね。改めて辞書を引くと、「とんでもない」で、形容詞、となっています。つまり、「とんでも」と「ない」は、切り離せないのです。
それからというもの、私はそういう場合には、「滅相もない」と書いています。
そういうご指摘は、ありがたいものです。
いま、10月刊の新作を書いていて、その中には、「架空の単語」がたくさん入っています。読者の方々は、気づいてくれるでしょうか。それとも、「早見の奴、またまちがえてやがる」と嗤うでしょうか。さて……。