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【あとがき】『サミュの図書館』完結しました。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882186549

物語本編に登場人物紹介やあとがきは入れないのが私のポリシーなので、こちらにつらつらと語っておきます。ちなみに入れない理由は「現実世界に引き戻されてしまうから」です。ミステリーとかと登場人物読み飛ばすの。だから誰が誰だかわかんない。読めよ。

※サミュの図書館に関するネタバレがありますので、閲覧の際はご注意ください※

といいつつ、話すのは書いた経緯と、構成と、テーマについてです。構成についてがネタバレと言えなくもないですが、正直目次以上のネタバレもありません。
語ろう。ちょっと長いよ。

・書き始めた経緯
長編をよそからサルベージしているなかで、うまく続きが書けず、構成とか伏線とかから逃げたくなったがために息抜きに書き始めました。公開は2016年の終わり頃だったと記憶しています。殺伐とした話を書いていたので、頭をからっぽにして書けるゆるーい話をオムニバスで書きたかったのです。だからこの時点では、小説におけるテーマはありませんでした。

・再開の経緯
というゆるい感じで始めたので、当然飽きてしまってエタります。二冊目の『虹色のメルヒェン』に潜ってからどう動かせばいいか、潜る本は決まったけど展開が思い付かず、結局また新しい話を書き出して封印。2018年まで凍結していたのです。
それを、書評の縁で読んでくださった方が、好きだといってくれました。本当に、この方の言葉がなかったらサミュは動き出すことができませんでした。感謝してもしきれない。
そこで「愛してもらった作品を、完結までもっていきたい」と思い、再始動しました。

・構成
二冊目のオチを考えた時点で、一番最後に取り上げる本は『虹色のメルヒェン』にすると決めていました。物語の途中、中盤の山場にもっていくこともできましたが、それ以上の成長、答えが出せなかったので最後にしました。
『虹色のメルヒェン』を最後にしたのは、サミュエルとセレスティーヌの成長した姿を見せたかったためです。正直、世界が崩壊するわけでも大きな衝突が起こるわけでもないハイファンタジーです。であればどこに終わりを見いだすかとすれば、キャラクターの成長だろう。と思った次第。
同じ本をもう一度治すとき、当然キャラクターが以前と変わっていなければ堂々巡りです。一回目のボスを倒せなかったなら、二回目ではレベルアップしなければ倒せない。だからこの物語は、サミュエルとセレスティーヌに人間的成長を与え、最後に同じ本に向き合うという構成になりました。私としては一番しっくり来る構成です。

・テーマ
これも二冊目を書いて、読者様から感想をもらったときに形にできました。「セレスティーヌは本当に本を愛しているんですね」と言われて、そうだ、セレスティーヌは本を愛しているからこそここにいるんだと再確認できました。であれば、この物語で描くべきはキャラクターの成長ももちろんですが、最終的には才能や力で克服するものではない。人を突き動かし救うのは「愛」なのだと、腑に落ちました。
鬱物書きの私が愛を説くなんて陳腐だと言い方もいるかもしれません。真新しさのないことかもしれません。世の中はそんなに甘くないし、愛でどうこうできるほど解決できる問題は多くない。『虹色のメルヒェン』でコグマが望んだように。多くの物書きがきっと愛以外のものに飢えている。
それでも、愛がなければ前には進めない。私のひとつの結論として、そう至りました。

以上、いかがだったでしょうか。
こう言ってはなんですが、『サミュの図書館』は私史上最も理想の完成形に近いものになりました。「もっとこうすればよかった」「ここを掘り下げたかった」「この展開は思っていたものと違う」そういった脳内との齟齬が小さい、という意味です。
流行りのジャンルとは言えませんが、それでも誰かの心に響くお話でありますように。

お読み頂きありがとうございました。『密室×王子』に続いて、長編の完結を増やせました。また近いうちに、ここにあとがきを書けますように。

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