『…君に何が分かると言うのかね?
Mr.エビナ?そもそも日本から遥々パリに来て私のサロンに突然現れ 今回の殺人事件の犯人が私だなんて、これ以上言いがかりをほざくなら貴様を名誉毀損で訴えてやるぞ!!
な、なんだと!貴様には確固たる証拠があるだと!だったら今この場で証拠を見せろよ!証拠を!
はぁ?それは後のお楽しみだぁぁ?!
フッ…そもそも亡くなったオーナーのピエールピエスモンテ氏は私の師匠であり!父親みたいに育ててくれた、私自身は実の親と思ってこの20年間共に歩んできた恩人を何故私が殺さなきゃいけないのかね?!
だいたいピエスモンテ氏が一昨日食べたラデュレのマカロンから青酸カリが検出されたんだろ?
だったら私には完璧なアリバイがある!
それに君は見たところ刑事なのか知らないが
洋菓子の知識はあるのかね?
な、なにぃぃ! 一昨晩ピエスモンテ氏が食べたマカロンはラデュレのマカロンではない?!だったら何処の誰が作ったマカロンだと言うのかね!!
なんだこれは? この二つの皿に分けた
見たところ抹茶のマカロンがなんだと言うのかね?
なに!この私に食べ比べをしろだと?!
ふん、見たところ右のは淡い色合いが特徴的でシンプルでエレガントな印象がある
それに対して左のマカロンはビビッドな色合いで、モダンでポップな印象がある
そして、 右の食感は…………………表面はカリッとしていて中身はもっちりとした食感が特徴的だな
はたまた…………………左の食感は表面は艶やか、中身は滑らかでクリーミーな口どけが特徴的だ
どちらも甲乙つけ難いが、、
何?他に気づいたことはないかだと?
ええい!さっきからなんなんだ!こんな馬鹿げた試験をして!
なっ!!……どちらか…片方がラデュレのマカロンで!もぉ片方がうちの!ピエールエルメのマカロンだと! そんなばかな!
ハッタリだ!
私は…今まで何百何千のマカロンを試食してきた!その私が分からないはずがない!
エルメのマカロンもラデュレのマカロンも元々はサロンド、テ文化のパイオニアで
ルイエルネスト、ラデュレの従兄弟である
ピエール.デフォンテーヌが考案したもの…
そこからエルメは独立して先代のピエスモンテ氏が継いで今がある…
はっ!!…た……確かに、右のマカロンはもっちりしていて歯にくっつく感じがあった!!
そして!左のマカロンはサクッとしていた為歯にくっつきにくい!
だったらなんなんだ!それがラデュレのマカロンじゃないって証拠にはならないんだぞ!
うっ!!これは!…、嘘だろ? 司法解剖の結果ラデュレのマカロンなら上顎にアーモンドやメレンゲの食べカスが付着してるはずなのに 全く検出出来なかっただと!
代わりに胃の中からは大量の青酸ガスと共に僅かだがエルメが長年使用していた日本の老舗 伊藤久右衛門の抹茶が検出されただって
フフフ……………完敗だ!
俺の負けを認めて罪を償うよ………とでも
言うと思ったか!
ピエスモンテ…あいつは死んで当然なクズ野郎だった 全店舗の全てを俺に押し付け、
朝から晩まで酒浸りになって日替わりに女遊びしてはサロンの金を使い込んだあげく、朝から晩まで馬車馬のように働かした俺を捨て よそのパテスリィーから婿養子を取ると言い出しやがったのさ
だから俺はピエスモンテを殺した!
なぁ、Mr.エビナさんよ それの何処が
悪い?
そんで、俺はお前に捕まるくらいなら死んだほうがマシだ!
Adieu (アデュー)Mr.エビナ』