一週間前に「湖畔」のモデルとなっている湖、木崎湖で釣りをしてきました。春の陸っぱりの時期を狙って毎年通っているのですが、今年はCOVID-19の影響でなかなか行くことが出来ず、ある程度落ち着いた頃にようやく釣行となりました。
朝4時から釣り始めて、ライズはあれどなかなかルアーには喰いつかず、諦めかけた時に、リールのドラグが悲鳴を上げてロッドが持って行かれたかと思うような重い感触がありました。午前6時10分。最初は地球を釣ってしまったかな、と暗澹たる気分だったのですが、リールが巻き上げられるので(何か違うぞ)と思い、やがて疑念は確信へと変わりました。数年来追い求めていた木崎鱒がヒットしたのです。慎重に、かつ手早くリールを巻き上げ、木崎鱒が姿を現した時の静かな興奮は未だに余韻が残っています。
ランディングネットに30cm丁度のキザキマスを納め、銀色に輝く美しい魚体を目の当たりにした時、自分の中でも静かな変化がありました。孝次と同様に、自分もまた悩み彷徨える魂であり、その中で木崎鱒を追い求めて、遂には幻が幻では無くなった瞬間を迎えました。自分も孝次も、ある意味においては救いを求めて鱒釣りをする求道者であり、孝次たちの物語にケリをつけないまま未完にしてしまうことは、孝次らが生まれた意味を持たなくなってしまうのだな、と。
木崎鱒はシンプルに塩焼きにしていただきましたが、脂の乗りが上々で本当に美味しかったです。この糧を得たことで、自分自身も、そして孝次たちの物語も新たに前に進むことが出来そうです。