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SS67

今回の公開内容

バシリス・クライム「当時先行で公開した最新話(現在更新済み)の一部」



 ニアミスと言えばいいのか、ニアピンなのか。
 枢クルリの電話を終えた俺らの耳に、別の着信音。
 そして焦った青路シュウの声が電話口から響き、藤さんが狼狽している。
 
 聞き耳を立てる俺――雑賀サイタと、その他二名。
 カナメママは優雅に座ったままだが、多々良ララはいつでも動けるように中腰姿勢だ。
 
 青路シュウの家に泥棒が入って、兄妹に被害が出たらしい。
 そのことで警察を呼んでほしいとか、双子達の保護を頼んでいる。
 なにを急いでいるのか、あっという間に通話が終了。混乱している藤さんが残されてしまった。
 
「サイタ、アタシ達はどうする?」
「そこで俺に振るなよ……」
 
 鏡テオも誘拐されたらしいし、大和ヤマトと天鳥ヤクモは夕方以降にしか動けない。
 あの猫耳野郎が引きこもらずに外出すれば、まだマシなんだが。
 
「あー、ちょっと待て」
 
 考えろ、俺。なにか大事なことが置き去りになっている。
 ここに来た意味がなくなる前に、それを突き止めなくてはいけない。
 事態が混迷している。きっとまたやばい目に遭う。そんな時に立ち位置を確認するには――。
 
「藤さん!」
「は、はい!?」
 
 警察への手配を準備しているダンディに、申し訳ないが声をかける。
 俺が青路シュウに出会って数日。一緒に過ごした時間は半日にも満たない。
 そこへ疑惑の事件がぶっ込まれている。それが薔薇の棘みたいに深く突き刺さるから、この違和感は消えないのだろう。
 
「シュウが本当に父親を突き落としたと思いますか?」
 
 多分、本当の答えを知っているのは本人だけかもしれない。
 だから藤さんに聞いても、それは確証には至らない。
 けれど俺がほしい答えは、単純だ。
 
「僕はそう思いません。シュウくんは家族想いのいい子ですから」
 
 じゃあ、それでいい。
 俺が勝手にその答えを信じるだけだ。
 この気持ちが裏切られる結果が待っていても構わない。
 
「教えてくれてありがとうございます! 俺達はテオを探しにいきます!」
「わかりました。ご武運を」
 
 なんかもう焦っているからか、藤さんの激励が少し変だったが悪くない。
 カナメママにもお辞儀をして、俺と多々良ララは店から出る。
 気づけば太陽が傾いて、夕方のセールが始まる時間帯になっていた。

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