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SS66

今回の公開内容

ミカミカミ「淡い前日譚」



 最初の記憶はあやふやだ。
 生まれた時から姿は変わらないというのに、精神――心が幼かったのだろうか。
 ただ目の前にいる相手を親と思うこともなく、それでも親しい相手だと認識した。
 
 ウラノスの民は素晴らしかった。
 彼らには不可能など皆無に思えたが、人間達を支配しようという欲望もなかった。
 愚かな王と猿達が蔓延る世界に不満などなさそうに、いつも穏やかに笑うのだ。
 
(……)
 
 彼らを見ていると、人間を猿だと見下す自分が醜いものだと感じられた。
 けれど人間を好きになる理由が皆無だから、この癖は直らない。
 
「アトミスは綺麗ですね」
 
 そう言って褒めてきたウラノスの民に対し、僕は初めて照れてしまった。
 他の妖精など見たことがないから、基準は不明。
 けれど褒められたという一点だけで、とてつもなく嬉しかったのだ。
 
 楽しかった日々の方が長かったはずなのに、寂しい月日が重くのしかかる。
 
 穏やかな笑みを浮かべていた彼らの、故郷とも言える場所。
 天空都市がミカミカミを求めてしまった。
 そうしてウラノスの民は散り散りになって、目の前から消えてしまった。
 
 僕はここで神殿を守り、彼らを待ち続ける。
 磐石と思われた隠蔽も、年月の経過には勝てずに人間に見つかった。
 ああ、うるさい猿達が騒いでいる。それは抜くものではないのに。
 
 誰も僕が見えない。
 それでいい。ウラノスの民だけが、僕に相応しい。
 それ以外を知らないのだ。
 
 鮮やかな金の瞳が、僕を見つめる。
 氷の奥底まで覗き込むような視線に、全身が粟立つ。
 そうして僕は――ミカと出会ったのだ。

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