今回の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「流行ると厄介なもの」
「そろそろネタが尽きそうです。
おやすみさせてください」
そんな文字が書かれた紙が扉の隙間に挟まっていた。
水曜日の朝にこんな紙を見つけては、なんの意味かわからない。
ただぼやけた意識の中で、なんとなく「部屋を間違えたのだろう」と、真琴は考えた。
アミティエ学園に部活動はない。
つまりラノベにあるような同人会や漫画部などといったのは存在しない。
では図書委員会のものだろうかと、覗見に話しかけてみる。
「さっぱりわからんでござる」
他にも心当たりをあたってみたが、誰も知らないと言うばかり。
こうなってくると怪奇現象の一つではないかとも思えるが、その割に怖くない文面である。
むしろ助けを求めているのか……それさえも不明だ。
ネタ――つまりなにかしらの手段が尽きたのかもしれない。
「よし、忘れよう」
そして真琴はメモ用紙を机の引き出しにしまった。
しかし翌日の木曜日、朝にまた紙が挟まっていた。
「ごめんなさい。部屋を間違えました。
見たもの全て忘れてください。
後生ですから」
懇願だった。
どうにも真琴が昨日探し回ったのがメモの主の耳に届き、恥をかいたようである。
こうなると犯人探しも断念するしかないが、謎は深まってしまった。
追及したい欲も出るが、メモの主が忘れろと言うならば仕方ない。
そして真琴は忘却した――つもりだった。
「あなたは誰?」
金曜日の朝にメモが挟まっていた。
そしてこれを機に怪文書回しが宿舎で密やかに流行り、新しい時代のチェーンメールが発生したのである。
メモの主――一年生宿舎の管理人は顔を青ざめさせて、同人誌原稿の前で泣くのである。