今週の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「苦労性」
男女の出会いとは奇妙なものだ。
妹が男子校に入学して性別を三年間隠し通したことよりも、彼氏を実家に連れてきた方に度肝を抜かれた。
赤い目の優しそうな男を見て、思わず「こんな妹でいいのか？」と問いかけたくらいである。
妹の結婚式が近づいていた頃、夜半に襲われた。
これで略奪行為を繰り広げていたならば、まだ斬り伏せることができたのだが。
襲撃者は恐ろしくも美しい女だった。暗闇の中で光る赤い目に吸い込まれそうになるくらいに。
その後の行為は口に出すのも憚られる。艶っぽくもおぞましく、背徳感で身が焼き切られそうだ。
襲撃者が欲しかったのは種だ。伴侶でも、理解者でもない。
精根尽き果て、体が千切れると思うくらいに絞られた。
しかしあの美しさに魅力され、体が動かせなかったのは真実だ。
貪欲さに関しては鬼と称するべきだろうが、それさえも彼女の美点となってしまうのが心底恐ろしい。
ただし事情を知った妹が見たこともない形相で怒り狂い、襲撃者の家にカチコミに向かいかけた。
それを妹の入り婿と一緒に引き止めたのは感慨深く、どうして妹が彼を選んだのかようやく理解できた。
後日、赤ん坊の写真が送られてきた時は気絶するかと思った。
ようやく瞼を上げた赤子の目は深紅色で、自分と瓜二つだったのだから。
襲撃者の弟は私と同じくらいの年齢だというが、学生と言われても信じるほどに若々しかった。
赤子の成長と連絡手段は彼に任せ、妹達の生活を見守った。
討伐鬼隊に所属する身の上からか、妹夫婦は子供を私に預けた。
入り婿と全く同じ目の色。鮮やかな赤い目と優しそうな相貌。けれどやんちゃなところは妹そっくりで、よく振り回されたものである。
そんな折、入り婿が死んだと知らされた。そこからは情報と感情の波に押し流され、どうにも忙しかった。
そのあたりからか、不穏な動きを察知する。それはあの男も同じだったようで、改めて協力関係を結んだ。
甥にも不可解な変化が起きていた。入り婿にそっくりなのである。顔だけでなく、性格さえも。
薄気味悪い予感が実現していくのを目の当たりにし、私は覚悟を決めた。
甥をアミティエ学園に編入させる。運命の渦中に放り投げ、事態の核心を掴むために。
そして彼に指針となるべき言葉を告げる。とある男の後悔が繰り返されないように。
――命を賭けるに値する友情を見つけてこい。