今週の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「TSドリームPart4」
双子の衝撃的な姿を目撃しても、目覚めない。
そろそろ違和感を覚えた真琴の前に、嵐の勢いで現れた少女が一人。
「我が登場を待っていた者よ! 喜ぶがいい!!」
別に待っていなかったし、喜びよりも驚愕が先だった。
燃えるような赤毛のポニーテールが風に揺れ、夕焼け色の瞳がきらきらと輝いている。
赤いブレザーを長コートのように改造し、その下は巨乳を支えるサラシと足首まで伸びた長スカート。素足にランニングシューズ。
格好は横に置き、美少女となったエゴコロ・若君の登場に開いた口が塞がらない。
「女番長風でござるな」
「シャツを着てほしい」
包帯にも似た布地で上半身の一部を隠しているとはいえ、分厚い胸部が豊かに揺れている。
夢の中で女体化したとはいえ、真琴の精神は少年のままだ。女性の体が目の前で曝け出されているのは、あまりにも目に毒である。
しかし若君は構わずに真琴へと詰め寄り、上目遣いでにやりと笑う。
「我が慧眼によれば、これはまた異なことよ」
「なにが?」
「因果律に関わる能力保有プレートのせいだな。これは本当に――夢か?」
問いかけられて、真琴はすぐに答えられなかった。
あまりにも質感が生々しいや、痛覚が発生することについては別問題だ。
大事なのは『意識がはっきりしている』という事実だ。現実と変わらないように思え、夢という自覚が強い。
「なるほど。女であれば、なにが変わっていたか……興味深い。つまり我が英雄譚が今ここに爆誕する!!」
「途中まではまともだったのに!」
真琴が知っている若君の調子で、少女が颯爽と別の場所へ駆け出してしまう。
あっという間に背中が見えなくなり、ポニーテールの毛先さえ曲がり角であっさりと姿を消してしまう。
残された真琴は不穏さに身震いした。
もしもの話。女であれば、なにが変わるのか。
「ね、ねえ。僕に友達っているのかな?」
背後に立っている覗見に対し、おそるおそる尋ねる。
仮定の話。男であった時に掴めていない答えを、女であれば手にしているのではないか。
そんな淡い期待を胸に抱いて、ゆっくりと振り返る。
「主殿はぼっち属性強めでござるからなぁ」
渋い返事。頰の辺りを指先で掻きながら、覗見が苦笑していた。
男女に違いはあれど、自分自身の変化はまだ見つけられそうにない。
「そっかぁ……」
ただの夢ではない気がしてきたが、今はとりあえず泣きたい気持ちで一杯である。
いつかは目覚めるだろうと楽観視しながら、他の人に会いに行こうと歩き出す。
胸ポケットで光る銀色のプレートのことなど、頭から抜けていた。