今週の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「TSドリームPart3」
いい加減、悪夢から覚めたいのだが続いている。
奇妙な感覚にうなされているような心地で、深々と溜め息を吐いた。
「ちなみに主殿はこの人だけは見ておきたい人物はいるでござるか?」
すっかりナビゲーター役になった覗見の一言に、わずかながら思案する。
滅多にない体験といえば聞こえはいいが、結局は泡沫の夢。いずれ忘れてしまうかもしれない。
「茨木は絶対に美少女だと思うから、面白みはなさそうだよね」
「ざっくり言い切ったでござるな」
ここまで混乱してしまうと、並大抵のことでは驚かなくなってしまう。
目的がズレているとは思いつつも、どうしても愉快な出来事を優先したくなってきたのだ。
「……やっぱり遮音と紫音かな。まあ美少女の可能性が大きいと思うけど」
「呼んだか?」
噂をすれば影。背後からの可憐な声に反応し、振り向いてみる。
「……」
前髪は赤く、後髪は金。瞳も青紫色。それだけで遮音だと判断できたが、自信がなかった。
全体的に太いのだ。樽の擬人化とか言われてしまえば納得できそうな丸み。巨乳なのかもしれないが、それ以上に膨らんだ腹に視線が向かう。
肌艶は整っているので、可愛い系ではある。しかし愛嬌のない表情のせいで冷たい印象も強い。
「まさかのデブ路線とは……ニッチ向けにいくでござるなぁ」
「オタくのいちに言われたくはない」
予想外ではあるが、ここは予想どおりでいてほしかった。
複雑な気持ちを抱える真琴の視線に、遮音と顔がそっくりな少女が映った。
「……」
長い髪の毛は基本的に銀髪だが、毛先だけは青く染めている。鋭い瞳は赤紫色で、力強い眼光を放っている。
紫音の色味ではあった。しかしたくましすぎる。筋骨隆々とした体躯に、旧時代の漢気溢れる青年漫画の終生のライバルのような威容。
袖口が破けているのはおしゃれなのか、布地が耐えきれなかったのか。ボディビルダー顔負けの少女が仁王立ちしている。
「主殿。エンディングまでは泣いてはいけないでござるよ」
「なら今がエンディングだよ」
友好を築きたい対象がぽっちゃりとマッスルになっていた。
それでも意識は覚醒に至らず、エンディングテーマが流れる様子もない。
はらはらと涙を流しながら、真琴は「もう少し夢を見たっていいじゃないか」など、夢の中で愚痴ったのである。