今週(先週)の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「ＴＳドリームＰａｒｔ１」
朝起きたら女の子になっていた。
そんな旧時代のラノベみたいな展開に、スメラギ・真琴は困惑していた。
しかし制服の厚みで胸は隠せる。身長がわずかに低くなっていたが、あまり違和感はない。
それよりも背中まで伸びた黒髪に、女性らしい輪郭。筋力さえも衰えたらしく、細い二の腕や腰回り。
ポニーテールに挑戦しようとしたが、初めての髪結びは上手くいかず断念。
仕方なくそのまま登校しようと心を決めたが、制服がズボンからスカートになっているところに一言申したい。
「……ミニスカートってどうやるんだろう？」
膝丈よりも少し下の長さ。だが落ち着かない。うっかり風でめくれてしまえば、下着が公の場で晒してしまう危険性。
ラノベの挿絵に載っていた女の子達は太腿が見えていたというのに、なんて豪胆なのだろうか。真琴は鞄でスカートを押さえながら寮から学校へ向かう。
「主殿！ おはようでござる！」
「あ、覗見っ！？」
挨拶すらも忘れた。馴染みのオタク忍者が、オタくのいちになっていた。
ニット帽やヘッドフォン、黒髪をひっつめにしているところなど、外見に大幅な変化はない。
だが体は曲線で、頬などの輪郭が柔らかそうな輪郭を帯びている。ぶかぶかのパーカーに超絶ミニスカートなど、ストリートファッション風女学生だ。
「……悪夢だ」
「いやはや、バレては仕方なし。そうでござる。これは全て夢故、主殿も思う存分楽しむ方が良いと存じまする」
「そういうのってメタ的なオチバレっていうやつじゃないの？」
電子書籍版ラノベからの悪影響で謎単語を憶えてしまった真琴に対し、覗見は晴れやかな笑顔で告げる。
「まあまあ。拙者としては百合もいける感じのオタくのいちになれて万々歳でござる」
「百合って花の名前じゃない？ となると、まさか遮音とかも……」
「ちょっと、そこのお嬢様！」
最初から喧嘩を売ってくるような声。嫌な予感を覚えながらも、真琴は渋々と振り向く。
「実流も……！？」
二度目の衝撃。金髪美女が豊かな胸を揺らし、小さな背を必死に反らしていた。
百七十近い身長の真琴を見下そうとしているが、百五十程度ではどうしても見上げてしまう。
それが悔しいらしく、赤銅の瞳をわずかに涙で濡らしていた。反り姿勢も辛いらしく、頬も真っ赤だ。
「ふ、ふふん。相変わらず身長だけ成長期のようで！ 少なくとも胸は私の勝ちね！」
「実流が全体的に可哀想。一人称どころが口調も変わってるし、身体的特徴でしか勝てなくなってる……」
「なんと哀れなり」
真琴だけでなく、覗見すらも同情する始末。金髪の巻き毛がふわふわと揺れても、なんだか虚勢を張っているようだった。
そしてミニスカート。やはり女子高生はスカートを短くしなくてはいけないのかと、謎の強迫観念に包まれている矢先だ。
「ちなみに夢オチでござるが、続くで候」
「え？」
「私以外に負けるんじゃないわよ！ 美少女度としては高いんだから！」
「え、ええー……」
よくわからないまま背中を押され、学校への道へ急ぐ。
もしかして男子校が女子校になっているのではないか。
物語の根幹的な崩壊を感じつつ、夢なら早く覚めてほしいと願う真琴であった。