こんにちは、古間木紺です。
ゴールデンウィークはゆっくりできるので、自分も参加中の第三回さいかわ卯月賞の全作品に感想を書きました!(選者の皆さまの参考作品除く)
第三回さいかわ卯月賞のリンクはこちら:https://kakuyomu.jp/user_events/2912051596662212725
ちなみに、しっかりと内容に触れているものもあるので、ネタバレ絶許の方はお気をつけください。
以下、参加順でお送りします。
⒈亀/青切 吉十様
これは確かに歯車が噛み合ってないな、と納得感がありました。「私」と父親は噛み合ってないし、女中と父親はむしろ「私」の知らないところで歯車が噛み合っていたのかも? でも「私」にとっては噛み合ってないも同然だったのかなと思いました。そして母はそれらを見透かしていたんでしょうね。しっかりホラーでした。
2.comet met commitment /薮坂様
春の宵だぁ〜〜と思いました。スナックさいかわのママがおっしゃっていたように、テーマ:春の宵って結構難しいと思うんですけど、薮坂さんが、これが自分の春の宵だと書いてくれた感じが個人的にしました。あと私はハピエン厨なので、光を感じるラストなのも嬉しいポイントです。
3.桜吹雪と酒飲みの戯言、鳴かず飛ばずも夢抱く/八坂卯野 (旧鈴ノ木鈴ノ子)様
今回のテーマが出てから調べたんですけど、「春の宵」って季語なんですよね。もちろん春の日の夜という意味ですが、その中でも優雅なひとときを指すらしく。それを踏まえて読むと、まさに春の宵を描いた王道作品だと思いました! 「僕」と妻にとって、あの夜が最高の出会いで、素敵な今に繋がっている。ストーリーが良すぎます……!
4.もういない犬と、ひとりで/山田あとり様
ある/あったはずのものを、無いものとして描写するのって難しいと思うんですけど、リアリティがあってすごく引き込まれました。個人的に共感する部分もあったりで、思わず自分のこれからにも思いを馳せてしまいました……!
5.ムーブメントは錆びつかない/諏訪野 滋様
諏訪野さんの参加作品を読むたびに、私は百合を書いてみたくなるんです。ただの読者にそこまで思わせるのって諏訪野さんの筆力あってなんだろうなとリスペクトしております。だってテーマはしっかり伝わるし、話もキャラもわくわくきゅんきゅんしますもんね。今回「私と雫の時間は、」の段落がすごく好きです。心に響きました。
6.『 爪 』/カッコー様
結末が良いですよね〜! 爪カタルシスだなぁと勝手に名付けてしまいました。そして急病というアクシデントはありつつも、家族の日常が浮かび上がる構成になっているのも好きなところです。
7.宵闇の待ち人/小径 散歩様
ハピエン厨に嬉しいお話でありがたいです。色んな嬉しいことが組み込まれていて、春らしさを存分に感じられました。浪人生の視点で、もう春なんて色んな意味で終わったよ、からのスタートだったぶん、より温かい作品だなと感じました!
8.逢魔が時/旗尾 鉄様
犀川ようさんの各賞のいい/面白いところって、みんな同じテーマで書くのに小説としてそれぞれ違ったものを読めるところだとも思っていて。それを改めて感じた作品です。私にはない発想に出会えて、面白いし勉強になるという一石二鳥展開でした。そして母を支える主人公に自分を重ねてしまい、心も揺さぶられました。
9.未来の世界で、お元気で。/蠱毒 暦様
タイトルの回収され具合がいいですよね。セリフや文体はライトなので楽しく読めながらも、ラストは純愛が待ち構えている二段構えも良かったです。
10.それでも君は歯車のように回り続ける 〜死諸葛走生仲達〜/四谷軒様
歴史小説でテーマ指定もあると、書くのが難しそうと素人ながら思ってしまうのですが、歯車がテーマとしてもきちんと噛み合っているのが素晴らしいですよね。終盤で序盤の図面が回収されたときの爽快感はたまりませんでした。
11.5本の爪痕/田中不燃様
読んだあとにこりゃ強いや……(五体投地)になりました。面白すぎるし小説としての骨組みが綺麗すぎます!! テーマ:爪は象徴性を滲ませて独自性を出すのか、具体的に使うのか分かれるみたいなことをさいかわのママがおっしゃってたじゃないですか。田中さんはその両方を使っているような気がして見習わなきゃいけないと思いました。
12.歯車は機械全体の性能を左右するぐらい大事な部品で、社会を支えるものだよ/獅子2の16乗様
お仕事小説来ました! 地の文での説明もそうですが、セリフに専門的な言葉や文章が入っていて、より仕事人の話なのが伝わってきました。幼馴染との再会も、幼馴染好きとしては嬉しい展開でした。
13.爪を切る日/春渡夏歩様
爪を通して老いや、家族の変化を見つめた作品で、温かさの中にほんの少し寂しさもある、繊細なバランスが魅力的でした。この温度感書けるのは羨ましいです。小説として切り取る日常の切り取り方も素敵だなと思いました。
14.Clockwork Spring / ono様
主人公エドワードとそのメイドのアリスのおかげで都市の四季は歯車が噛み合わさり、さらに2人の歯車も噛み合って終わるのが素敵でした。いっぱい噛み合うところが世界観を映し出しているような気さえして、楽しくスチームパンクを読ませていただきました!
15.ギアフレンズ/維 黎様
友情のメタファーとしての歯車! いいですよね〜! 私は友情も、バカやってる男子高校生も大好きです。絶対にこの5人じゃなきゃだめなんだ!という信頼感を、歯車が噛み合うという描写にしているところが好きです。
16.つまつみつむつめつも/ハマハマ様
まさかまさかの展開でした!! 詩のような文体なので、おや?となりながらも読み進められちゃうところもミソです。
17.黄昏を歩く。咲き誇る時まで/遠藤孝祐@読み専の呼吸様
春は始まりの春として、一歩踏み出す話も書けますよね。途中までは、そういうお話だと思っていました。いい人間ドラマだなぁと思っていたら!! 短編なのに盛りだくさんで面白かったです。
18.すれ違い未満/千桐加蓮様
幼馴染好きとしては悲しい展開ですが、これもまた好きです。幼馴染って友達よりは上だと、あぐらかきがちじゃないですか。そのうち他の人に取られてしまう、という部分に焦点を当てて、「歯車は、もう別々の場所で回っている」と描いているのがほろ苦くもそれが良かったです。
19.目覚まし時計が鳴らなくて/大田康湖様
空気感が好きです。地の文の質感と口調のバランスが私好みなんだと思います。個人的に小夜莉がおばあちゃんっ子で好きです。
20.桜よ、今は墨染色に咲け/深山心春様
墨染色を調べたのですが、文字の通りの色で、紅の悲しみがどれほどのものか、推し量ることができました。桜の王子がそれを願ってしまうほどの悲しさだったのかぁと読み終えてから、物悲しさを覚えました。
21.天災の歯車の噂/和魚語り様
男ふたりが砕けて話しているので、読み手も楽しく読めました! 直るとどこか行ってしまう歯車は抜けている感じがして、もはや天然では?とツッコミそうになってしまいました。
22.しんてんち/押田桧凪様
私は押田さんの描くシーン、文章が好きだなぁと思っているのですが、今回も本当に好きです。転校して初めての場所、言葉だったけど、勇気を出すことによってなんだかうまくやっていけそう、という部分を、歯車が噛み合ったみたいだとゆづるが感じているのが最高でした。
23.『鬼の爪 Every action, a reaction!』/宮本 賢治様
風景の描写から茶屋、サクラへと読者の視点が移っていくのが、まるで映像作品を観ているみたいでした。サクラがどうして男装をして旅をしているのか、なぜ鬼哭衆のトップなのかなど、まだまだ世界観が広がっていきそうで、思わず続きが気になってしまいました。
24.爪と指/ハル様
この話はホラーですよ、と布石を打つのが上手で勉強させてもらいました! 書き出しで読者の心を掴まないといけないのはご存知の通りですが、書き出し含む文章の雰囲気や冒頭の切り取り方で続きを気になるようにさせないといけないなと気づきました。ちなみにラストシーンは思わず自分の指も痛くなりました……。
25.春荒れ/とるてたたん様
序盤の幸せで穏やかな春の日常が、たった5文で荒れ模様に変わってしまう展開の急さについていけなさそうになったのですが、それが「私」の心の動きそのものだったんじゃないかと思うと、こちらまで失恋した気にもなりました。
26.卯月の爪痕、仏の背に散る桜/大隅 スミヲ様
虫は殺せないのに!!!と読後叫びそうになりました。がっつりネタバレですが、私は犯人視点で読んでいたってことですよね、それってすごくないですか!とテンションが上がりました。ミステリーを最近読んでいないので、もっと読まなきゃなと思いました。
27.浜辺にひらり/霙座様
青悟のキャラがいいですよね。純粋培養の優しさが「僕」(尾崎)を包んでくれる。今後の二人の関係性が気になります! 桜貝の扱いについて、序盤では離れて暮らす我が子に重ねていましたが、最後では青悟が自分の爪に乗せていて、それがこれからの未来を暗示しているようでした。
28.春の陽だまりと、狂犬を統べる女 〜そして運命の歯車は音もなく噛み合う〜/すまげんちゃんねる様
こんな歯車の噛み合い方ってあります!?と突っ込みたくなるようなコメディでとても面白かったです! ネタバレですが、彼らがお互いの事実を知ってしまったあとはどうなってしまうのでしょうか? でもきっとそれもまた面白くなる予感がしました!
29.願わくば花の下にて/凧カイト様
大人になっても忘れられない特別な宵もある種春の宵だなぁと思いました。お母さんが再起を図ってくれたことで、こうしてすみれがあの日を振り返られたんだなぁと思うと感慨深くなりました。
30.指先のパッセージ/snowdrop様
私は音楽畑の出身なので、タイトルの「パッセージ」が何に効いてくるんだろうと思いながら読ませてもらいました! ネイリストとして働いていた頃はたしかに爪でパッセージを演奏しているようだし、小説を書いている今も爪先でパッセージを作りあげているなぁと気づきました。特に今回の主人公のようにパソコンだとなおさらですよね。
31.爪/佐藤宇佳子様
テーマ:爪を具体的に使うか、象徴にさせるかで分けられるなか、爪に関するりょうのなつきの思い出を描写していくところが好きです。爪を爪として描いているように感じました。りょうとなつきの空気感も大好きです。
32.色/クロノヒョウ様
会話のやり取りがナチュラルなのが好きです。雰囲気も明るくて、ラストもより温かみを感じられました。ラスト最後から2文目「私がやらなければならなかったことは——」がいい文章だなと思いました!
33.爪を噛む/@gagi様
「爪を噛む」ことを3,364字いっぱいで書いているところが好きです。テーマ:爪にまっすぐ向き合っている姿勢が本当に良すぎました。どうして爪を噛んでしまうのか、爪を噛むことでどうなるのか、論理もしっかりしていて作品としてもめちゃくちゃ好きです。
34.cog in the machine/縦縞ヨリ様
社会で働く人々の群像劇を通して、テーマ:歯車を浮かび上がらせるという高等テクニックを目撃しました! 縦縞さんがさいかわ賞に出されている作品は読ませていただいているのですが、縦縞さんは読み手の感情にダイレクトインする作品を書くのがうますぎるなぁと思います。
35.互いに素/志重文吾様
歯車の特徴で全てが決まる社会で、自ら(と自身の歯車)を持て余しているふたりが、新たな一歩を踏み出すという終わり方が綺麗で爽やかで好きです。材質が同じという、冒頭での下りが最後に効いてきたのも良かったです。ここで書いていいのか分からないですが、このようなハイレベル設定作成能力、以前もお見かけした気がするような……?
36.もうすぐ三年生/幸まる様
春の宵の特別な一時を通して、「違ってもいい」に気づいて成長するという、話の構成が綺麗な作品でした。始めから終わりで前向きな変化のあるところが良いですよね。テーマ:春の宵にまっすぐ向き合っているところも好きです。
37.あこがれの/霜月れお様
霜月さん、さてはネイルをされている方だな?と思わず推測してしまいました。色んなネイルが出てきて、そっちの方でも勉強させてもらいました! 菜月の、爪は足にもあるという言葉がきっかけに、千鶴の世界が広がっていくところが良かったです。
38.よいのせい 〜spring forever〜/篠崎 時博様
飲みニュケーション描写がリアルで心当たりがとってもありました。飲みニュケーションに心当たりのある人間なので、中江に共感をしながら読みました。最後の失恋は残念でしたが、マチアプ、がんばれ、とも思いました!
39.マル秘1on1ミーティング -或る50代男性の場合-/未来屋 環様
テーマ:爪でこんな話思いつきます? アイデアが良すぎます。導入からのギャップがありすぎて面白いのもそうですが、ギャップというイベントがそれだけで終わらないのもいいですよね。
40.爪を刻む/古間木紺
まさかの拙作が40作品目だったんですね。爪そのものや爪に関する言葉を調べて、今回は「爪痕を残す」に焦点を当てました。
41.夫が歯車を吐き出した/猫小路葵様
タグについている通りシュールな作品でした。登場人物が実は機械人間で――!という設定を際立たせているのは、夫が「壊れて」もあっさりしている妻ですよね。いいキャラしているなぁと思います。シュール×ホラーなのに面白く読ませていただきました!
42.春宵怪異/城戸うたげ様
夢を見ているみたいに不思議なお話でした。主人公の体験の証左は残された歯車のみで、色々想像の余地が残されているのも面白かったです。
43.嘘と桜とレモネード―狂い咲きの桜の街―/柊野有@ひいらぎ様
色んな設定や伏線が張り巡らされていて、これは続きも過去回想も気になるやつ!と思いました。特に終わりの交わるはずもなかった両組織が交わってしまうところが気になります!
44.琥珀が転がった先に/大和田よつあし様
読了してタイトルを改めて見てみると、転がった先に久野とのコンビ関係があったということか、と気づけました。久野のキャラは好きだし、その久野にツンな片瀬もいいですよね。そりゃ偉大な功績を残せますわと思いました。
45.花筏、白縹の水面にゆるり流るる/花恋亡様
「いいお話」を読ませていただいた感触がしています。これぞ人間ドラマだと思いました。4,000字の中で男がしていることとその見返りが描かれ、さらに男自身の自己肯定も含まれている。密度の高い4,000字をありがとうございました。
46.仕様書にない春/筋肉痛様
冒頭の「生きることは考えることだ」がいいですよね。常に色々なことを考え続けて小説書きとして生きているので、共感しながら説得力を感じました。作中に話を戻すと、何もなくなってしまった世界では、思考し続けないと生きていられないのかなとも思いました。
47. If you want to hear the distant voice of the ocean /熒惑星様
海、というか水中で向こう側を見るときってぼんやりしているじゃないですか。そういう揺蕩っているさま、幻想的な感覚のする小説でした。絵を描く描写がメインで進んでいくのですが、個人的にかなり勉強させていただきました。
48.君に花びら千枚飲ます。/こよい はるか@PLEC所属様
幼少期からゆびきりげんまんをしていたふたり。最後の最後、不慮の事故によって約束が果たされることはなかったわけですが、その悔しさ、やりきれない怒りや寂しさを、針を1,000本飲ますのではなく、桜の花びらにしていたところに、幼馴染やそれ以上の関係性としての情を感じました。
49.歪んだ爪痕/mitukochi様
揚げ物は実家に限る、という言葉に共感しているくらいには実家の存在があった「私」にとって、再婚で変わってしまった実家は、もはや実家じゃないよな、と思いました。そりゃ父の仏壇を持って帰りますよね。
全49作品読ませていただきました! 各作品で文字数がバラバラになってしまったのは申し訳ないです。でも全て愛をもって読ませていただきました!! 今回本当に面白い作品ばかりで楽しかったです!! ありがとうございました!