いつも本屋でバイトしていた気がする。
初めてのバイトは、いまはもうない、三軒茶屋にあった三階建ての本屋だった。毎日その本屋で立ち読みしていたからスカウトされた。五年くらい、店が潰れるまで働いていた。初めてのバイト、そしてやっぱり20歳そこそこの頃にした仕事というのは、人生の中でなにか特別なものになる、気がする。
いろんな本屋でアルバイトをした。
違う職種を働いて、でもやっぱり本屋に戻ったりした。
小説家になりたいなあ、でも本に囲まれてるし、まあいいか、いやいやそんなんじゃだめだ、とかとか、働きながら思っていた。
いつだって、本屋のアルバイトが、ベースになっていたと思う。
遅番だからといって決して担当になれないというわけではありませんが、混雑する時間帯ですからなかなか難しいし、なによりやるべきことは山積みでした。
働いている間、ずっと一緒だった人たち、もう会うこともない人たち、いまでも会う人たち、すべての本屋で出会ったみなさんに、この「本屋の小説を出版しました」という喜びと感謝を込めて、捧げます。
結局本屋が、世界で一番愉快な職場だと、思っています。