✳︎以下の文は書籍版『熊本くんの本棚』のあとがきとしてお読みください。
『熊本くんの本棚 ゲイ彼と私とカレーライス』あとがき
いいたいことはだいたい、これまで読んできた小説のなかにあった。だから自分の考えていることはありきたりなことである。そんな風に思っていました。
けれど、読めば読むほど、一冊一冊いいたいこともやろうとしていることも異なるというのに、いちいち感動したり共感してしまう。この世にある本すべてに、「自分」がいるのかもしれない。
さまざまな自分をかき集めたなら、僕は僕オリジナルの小説を書くことも可能なのではないか? そんな大それたことを考えました。それが、一つの長編小説となり、本になったこと、感激しています。
思いだすのは本棚だ。
この一文を書いたとき、ここからどこまで遠い場所へ向かえるだろうか、と身震いしました。
物語の行き着く先もそうですが、この作品が自分自身もとても遠い場所まで連れていってくれました。
荒っぽい小説です。嫌いになれないのはきっと、あらゆる自分がちりばめられているからでしょう。などと書いたらまさに「きもちわるい」わけですが。この小説を書き終えたとき、そして最終校を手渡したとき、自分を誇らしく思ったのだから、しょうがない。そのきもちわるさも受け止めて、これからも書き続け、背中を見せて走っていきたいと思います。追いつかれないようにしないといけません。誰に? 作中に書いたっけ。
担当してくださった富士見L文庫のMさん、そして編集長、ありがとうございます。凛々しい二人を描いてくださった慧子さん、デザイナーさんにも何度でも、感謝の言葉を述べたいです。
チームカドカワ、最高です。小学生のとき、文庫(尊敬する宗田理さんの『春休み少年探偵団』)を初めて買ってからウン十年。あの頃の自分にいってやりたいです。多分いっても「はあ?」と舐めた顔をするだけでしょう。糞餓鬼奴。
Webで読んでくださった皆さまにこの小説を、「活字なら」と小説を買ってくれた母に、この書籍を捧げます。
書籍版は、最終章を加えさせていただきました。気に入っていただけたら、嬉しいです。
まだまだ新しい小説を書いていける気がしています。
多分すぐ、新しい小説でお会いできると思います。
令和元年 十二月
キタハラ