モノ カキコ

昭和初期。司水(しみず)家の三姉妹である百合、椿、菫はある日水難事故に遭い、次女の椿だけが助からなかったと思われていた。末娘の菫はその違和を拭えずに悶々とした日々を過ごしている。…

2201年の日本。国有の子どもの一人として政府に養われている十二歳の少女、棗は誰かに呼ばれているような気配を探ろうと施設を飛び出してしまう。その先で思いもよらない大きな流れに巻き…

「何年かに一度、波が虹色に見えることがあるんです──」 奇妙な言い伝えを信じて浜辺に通う紗雪と、人の記憶を蒐集していたとされる高祖父を持つ透子。 海は優しいようで冷たい。美しいよ…

世界が滅びるそのとき、わたしは鮫です。レモングラスの香りのクラゲを水槽に飼って、海中で夢を見るのです。

ことばで、絵を描きたくなった。絵を描くみたいな感覚を用いて文章を書いたら、こんな風になった。

奇形の双子、奴隷商人、旅の富豪。アカシアの生い茂るこのオアシスはその昔、乾燥した砂漠荒野であったという。 ワディが川になった経緯とクジラの言い伝えにまつわる説話的ファンタジー。

「だけどブルーハワイは逆だよね。空の方が、雲を覆って染め上げるよね」 確かなはずのケイちゃんとの記憶が時々怪しくなる。私ことカナは、子供時代の記憶と現在の記憶とのずれを感じながら…

日記のような、エッセイのような。 ずっと自分は人間じゃないと思ってた。そんな私の書き溜めてきた過去の文章たちを、小出しにここに記します。 ちょっとした空き時間にも読める、短めの…

皆橋駅は深夜一時を過ぎると無料開放する。常連客の少女ハツは夜を愛し昼を厭う。ある晩ハツはクラスメートの左記子に遭遇し──。

「本当は思春期は、何もかも打ち壊す破壊の時期なんだ。蝶の完全変態みたいにさ」と古都は言う。 青い蝶をめぐる破壊的な青春をわたしは過ごした。突き錐の奴隷契約を交わした古都と。

「あなたが残るなら、果穂子は百年も千年も、永遠にまでいきませう――」 司書として働く六花はある日図書館の大机の裏にびっしりと書かれている日記を発見する。その日記の秘密を紐解くとき…

もとより高等学校を卒業したら、真っ先にこの町を出ようと思っていた。そう思っていた折、母が亡くなったのでこの町と左記子を繋ぐ紐は完全に解けた。 美しさを求めて、日々を電車内で過ご…