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蝉の鳴く季節、なとぅ

 深夜に突然鳴り出した携帯の液晶画面には、先日片思いの女の子にフラれたばかりの後輩の名前が表示されていた。
 恐る恐る携帯を手に取り、慎重に通話ボタンをスライドする。取り乱した後輩からヒステリックな言葉が溢れ出るかもしれないし、泣きじゃくって言葉にならないかもしれない。深夜という時間帯が悪い想像を次々と浮かび上がらせるから、「もしもし」と答えた声が裏返ってしまった。
「先輩!助けてください!」
 予想通りの震えた声が僕の耳を攻撃する。取り乱した相手に対して、まず優先すべきは落ち着かせること。間違ってもこちらまで慌ててはいけない。僕は平静を装い、至って冷静に、低い声で「どうした?」と聞いた。後輩の荒い息遣いが、焦りと不安に包まれたその心情が、電話越しに伝わってくる。興奮が収まらないまま、震える声で後輩はこう告げた。
「部屋に!蝉がいるんです!助けてください!!」
「は?」
僕は携帯を投げ捨てた。


 こんにちは、織園ケントです。
 8月もど真ん中ということで、夏だなぁと感じることが増えました。
 部屋に侵入した蝉を見て発狂する後輩からの電話。少し歩いただけで滝のように流れ始める汗。夜更かしをして寝ようとしたら、もう既に外が少し明るい朝5時。
 どれも夏を感じる瞬間ではあるけれど、夏の居酒屋でバカな友達と飲むビールが1番美味しいし、ガンガンに冷房の効いた家で甲子園を垂れ流しながら寒いと言って布団に包まる瞬間が1番幸せ。だったりします。少なくとも僕は。
 そうして布団に包まりながら、文を綴る今この時、なんでもないただ1人の男が垂れ流すこんな文章を、読んでくれる誰かがいるというその実感が、これまた幸せであり、物書き冥利に尽きる次第です。
 はてさて、そんな僕が書いた小説「『らしさ』を見つけるには現代は生きづらい」。先日、無事完結致しました。読んで頂けたでしょうか。
 僕個人の価値観ですが、自分が書いた文章についてあれこれ解説するのは無粋だと思ってます。僕には僕なりの意図があって、僕なりの経験があって、僕なりの感情があって、文を綴るけれど、それを読んだあなたには、あなたなりの解釈で、僕の文が溶けて行ったら良い。そんな風に思ってます。どんな形であれ、僕の文があなたのど真ん中に届きますように。ぜひ、あなた『らしさ』のある解釈を。

 と、まぁ少しカッコつけた文章を書きましたが、その裏では僕のふざけた感情が溢れ出す新作小説が絶賛執筆中です。
 とある悪友から女の子視点の物語を求められた手前、女の子を主人公に据えての新作。どんな爆弾が誕生するか、ご期待頂ければと思います。計画性も管理能力も皆無な僕であり、「いつ頃公開します」なんて約束は到底できるはずありません。気長に待っとけ。

 またそのうち近況報告します。みなさんも暑さと蝉にはお気をつけて。以上、布団に包まる織園でした!

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